『勝間式「利益の方程式」 ─商売は粉もの屋に学べ!─』
Posted on | 7月 27, 2023 | No Comments
美容室開業後の料金値上げの方法(21)
理美容サービス料金の値上げをどうやってするかについて、シリーズでお伝えしています。
先回は、『良い値決め 悪い値決め ―きちんと儲けるためのプライシング戦略』をご紹介しました。
今回は『勝間式「利益の方程式」 ─商売は粉もの屋に学べ!─』をご紹介します。
勝間さんも 、利益を得る為には価格を1%でも上げようと、著書のなかで説いています。
先月お伝えした田中さんの本より、勝間さんが提示する方程式は、変数がひとつ多いです。
田中さんの説く利益の方程式
1個の利益(販売単価-仕入れ単価)×販売数量=全体の利益
勝間さんの説く利益の方程式
(顧客当たり単価-顧客当たり獲得コスト-顧客当たり原価)×顧客数=利益
「顧客当たりの獲得コスト」がどうしてはいっているのかなあとおもって、考えてみました。
わたしなりの考えですが、勝間さんが「供給過多のいまの時代には、マーケティング活動を行うことは必要」ということを伝えたかったのではないでしょうか。
待っているだけで、顧客がやってくる時代はおわったので、集客のコストを最初からいれて、商売を行うべき、と説いていると理解しました。
たしかに、人口が伸びない日本では、新しい顧客は、結局だれかの失客でしかありません。
だから、プライシングにおいて、会計知識ではなくマーケも大切だと、方程式にも表して説いているのですね。
勝間さんなりのマーケが大切と説く点で、2つの理由に納得しました。
(1)顧客の声に敏感になれ
顧客獲得コストを究極にゼロにするには、リピーターを増やしロイヤルカスタマーを育ててゆくことと、口コミが発生することにゆきつきます。
会計知識や数字の操作だけで、価格アップを考えている段階では、リピーターになっていただく仕組みや、口コミを得てゆく仕組みづくりがおざなりになり、どうしても「新規客」にばかり目がゆきがちです。
ロイヤルカスタマーでさえ、「既存客」とひとくくりに考えてしまいがちです。
顧客獲得コストに注目し、まず顧客の声を聴いてから出発しようという勝間さんの提案は、利益をもたらすロイヤルカスタマーも大切にする目線をわすれずに全体をみわたせるようになります。
(2)俯瞰的な視点をもつ
顧客獲得コストを極端におさえて利益をとったため、翌期の利益がへってしまった企業の例をあげてくれてます。
それを読むと、自分のビジネスは、顧客獲得コストをどのぐらいの期間で回収するかという思考に向かいます。
いまのコストは次の期の利益になるのか?
長期的な視野で、利益をつくってゆく考えをもつことができます。
単月黒字にこだわる必要もありますが、中小企業の経営者でも、3~5年先の視点をもつ必要があります。
俯瞰的視点も養ってくれる提案なんですね。
高価格化は、利益を得るために行います。
そのために、会計知識だけでもだめだし、心理学の知識だけでもだめだし、利益を削らないように調整する項目にマーケティングの知識も大切という提案の本だと理解しました。
最後に、勝間さんは「利益は地球資源にも優しい」と説いていた一文を引用して、おきます。
この引用部分をとりあげたのは、「利益を得ることは、私利私欲なのではなく、地球規模に利益をもたらすことなんだ」と、勇気をもらえる気がしたからです。(P43)
---引用開始
もし、より短い時間で高い利益を上げるとこができたら、私たちは低カロリーの食事をもっとゆっくり楽しみながら摂ることができます[略]
つまり、「利益を上げること」は企業にとって必要なだけでなく、私たちが人間らしてく生きるため、充実した人生を送り、そして地球の資源を長持ちさせるためにも、必要な考え方なのです。
---引用終わり
勝間和代著『勝間式「利益の方程式」 ─商売は粉もの屋に学べ!─』東洋経済新報社、2008年。
価格アップのために学ぶ本の紹介は、来月も続きます。
執筆 和田美香
中小企業診断士/美容室開業コンサルタント/オンラインコース・クリエイター/みかんぐみ株式会社 代表取締役
はじめての美容室独立開業工事110番
https://salonopen.com
フリーランス美容師のためのシェアリングサロンfrange
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スキルを伝え収益の柱をもうひとつオンラインスクールでつくる
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<美容室開業後の料金値上げの方法>
【これまでの連載記事】
1)いつ価格を上げるか?
https://ribiyo-news.jp/?p=33208
2)顧客に提供する価値って一体なんだろう?
https://ribiyo-news.jp/?p=34007
3)美容室開業後の値上げのメリット・デメリット
https://ribiyo-news.jp/?p=34088
4)値上げによる顧客減の不安を解消する
https://ribiyo-news.jp/?p=34272
5)まず理念の浸透/値上げ前の準備 その1
https://ribiyo-news.jp/?p=34514
6)理念の次は、従業員満足度アップ/値上げ前の準備 2
https://ribiyo-news.jp/?p=34841
7)リピート対策に割引は?
https://ribiyo-news.jp/?p=35149
8)サービス提供時間を伸び縮みさせる
https://ribiyo-news.jp/?p=35295
9)おかしな「業界標準」もある
https://ribiyo-news.jp/?p=35601
10)シンプルに伝えるだけ
https://ribiyo-news.jp/?p=36100
11)料金アップは、その理由を明確に伝える
https://ribiyo-news.jp/?p=36400
12)出会いたい顧客に勇気をもって出会う
https://ribiyo-news.jp/?p=36676
13)サロンの使命とビジョンを顧客と共有する
https://ribiyo-news.jp/?p=36944
14)別ブランドを展開し、価格帯を変更
https://ribiyo-news.jp/?p=37209
15)高級ブランドを新たに創る
https://ribiyo-news.jp/?p=37410
16)『絶対儲かる「値上げ」のしくみ、教えます』石原明著
https://ribiyo-news.jp/?p=37683
17)『ザ・プロフィット 利益はどのようにして生まれるのか』
https://ribiyo-news.jp/?p=38006
18)『ザ・プロフィット 利益はどのようにして生まれるのか』続
https://ribiyo-news.jp/?p=38353
19)『価格の心理学 なぜ、カフェのコーヒーは「高い」と思わないのか?』
https://ribiyo-news.jp/?p=38655
20)『良い値決め 悪い値決め ―きちんと儲けるためのプライシング戦略』
https://ribiyo-news.jp/?p=38977
タグ: みかんぐみ, 人生100年時代の美容キャリア, 和田美香