『一銭職分由緒書』(写本)、原文と読み下し
Posted on | 1月 4, 2024 | No Comments
『一銭職分由緒書』(一銭職由緒書ともいう)は、理美容業の祖といわれる藤原采女亮政之(ふじわらうねめのすけまさゆき)が鎌倉時代に髪結職(一銭職)をはじめた経緯から、戦国時代になって采女亮から17代目の北小路藤七郎が武田軍から敗走する徳川家康が天竜川を渡る手助けをし、褒美として銀銭一銭を賜り一銭職と呼ばれるようになった経緯を記した書です。
それらのありがたい経緯を踏まえ、21代目の幸次郎の時に江戸髪結株仲間(組合)申請に際して提出したのが本書です、というものです。
亀山天皇時代の出来事から、徳川家康を助け、また徳川吉宗や大岡越前も登場する、奇想天外な書です。
書かれている内容は眉唾もので、学術的には偽書として扱われています。『一銭職分由緒書』に限らず、他職の由緒書、由来書、また神社縁起も同様に扱われています。
『一銭職分由緒書』は享保年間に書かれ、各地に同様の内容の由緒書が残されています。同様の内容といっても多くが転写本で、誤記の類から一部が省略されたものまで、同一ではありません。
下に掲載したのは、『兎園小説』(正編、曲亭馬琴)に収められた「駒込富士來歴【一錢職分由緖附草加屋安兵衞娘之事】(文寶堂)」壹錢職分由緖之事によるものですが、この写本は、采女亮政之の父である北面の武士が亀山天皇の剣を紛失した部分が略されています。
タグ: 一銭職分由緒書, 一銭職由来書, 采女亮政之