理美容市場規模は「2兆1240億円」と「1兆6823億円」? 調査手法の違いを読み解く
Posted on | 6月 30, 2025 | No Comments
2兆1240億円と1兆6823億円――いずれも信頼性の高い調査機関が発表した2024年の理容室・美容室市場の規模です。
前者は矢野経済研究所、後者はホットペッパービューティーアカデミー(リクルート)による推計であり、その差は実に4417億円にのぼります。発表時期や年度のズレを考慮しても、ここまで差が出る理由には驚きを覚える方も多いでしょう。
では、どちらが正しいのでしょうか?
実は、調査手法の違いが結果に大きな影響を与えています。
矢野経済研究所は、大手理美容サロンを中心とした事業者へのヒアリング調査をもとに市場規模を算出しています。一方、リクルートはユーザー側――つまり実際にサロンを利用している人々へのアンケート調査を基にしています。この「事業者視点」と「利用者視点」の違いが、数字の乖離につながっているのです。
事業者による回答には、将来への期待が込められていることも少なくありません。一方、利用者の回答は、比較的リアルな利用状況を反映している傾向にあります。
この関係性は、国の統計にも通じるものがあります。たとえば「消費者物価指数(CPI)」は価格や料金を元に算出されますが、「家計調査」は実際に家庭が支払った金額をベースにしています。美容サービスにおいても、CPIでは緩やかな価格上昇が見られる一方、家計調査では支出金額が横ばいという結果になっています。つまり、料金がやや値上がりしても、消費者は利用回数を減らしたり、安価なサロンを選んだりして対応しているというわけです。
このことからも、市場規模を語るうえでは、家計支出の比率が比較的実態に近いと考えられます。仮に国内の民間最終消費支出から理美容サービスの支出割合を推計した場合、その数値はリクルートの推計にやや近く、矢野経済研究所との中間あたりになると考えられます。
ただし、リクルートの調査では14歳以下と70歳以上が除外されているため、これを考慮すれば市場規模は1.8兆円程度と推定することもできますが、あくまでも概算にすぎません。
結論として、理美容市場の規模は「おおよそ」でしか把握できないのが実情です。調査主体や手法によって見え方が異なることを理解したうえで、複数のデータを比較することが大切です。
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タグ: 理美容ラウンジ, 理美容市場規模