理美容業、料金改定に慎重姿勢続く 仕入価格は上昇も収益は伸び悩み 日本公庫調査
Posted on | 12月 6, 2025 | No Comments
物価上昇が続くなか、理美容業も人件費や原材料費などの上昇を受け、この1年間に料金を値上げした企業は、理容業で22%、美容業で31%あった。しかし、値上げ後の収益では、理容業は「増加」が「減少」を上回ったものの、美容業では「増加」が12%に対し、「減少」が23%となった。
料金を上げたにもかかわらず収益が減少した生活衛生企業は美容業に限らないが、値上げには慎重にならざるを得ない状況だ。
日本政策金融公庫は、2025年9月に実施した「生活衛生関係営業の価格動向に関するアンケート調査」の結果を発表した。
■仕入価格動向
前年比の仕入価格(%)
| 業種別 | 上昇 | 変らず | 低下 |
|---|---|---|---|
| 理容業 | 63.3 | 33.2 | 3.6 |
| 美容業 | 62.8 | 32.4 | 4.8 |
| 全体 | 81.7 | 15.9 | 2.4 |
仕入価格動向では、理美容業の約63%が「上昇した」と回答した。原材料費が経費に占める割合は他の生活衛生業に比べて低い理美容業だが、それでも用剤類の値上がりの影響は小さくない。生活衛生業全体では、飲食業やホテル・旅館業における食材費の高騰が平均値を押し上げた。
今後1年間の仕入価格の見通し(%)
| 業種別 | 上昇 | 変らず | 低下 |
|---|---|---|---|
| 理容業 | 62.1 | 35.3 | 2.6 |
| 美容業 | 65.2 | 31.9 | 2.8 |
| 全体 | 79.5 | 18.9 | 1.6 |
今後1年間の仕入価格の見通しに関しては、理美容業では約3分の2が「上昇する」と見通しており、前年と同程度の企業が引き続き上昇傾向を予測している。
■販売価格動向
販売価格(料金)の動向(%)
| 業種別 | 引上げ | 据置 | 引下げ |
|---|---|---|---|
| 理容業 | 22.7 | 76.1 | 1.2 |
| 美容業 | 31.1 | 67.6 | 1.3 |
| 全体 | 49.6 | 49.1 | 1.3 |
前年に料金を値上げした理美容業の割合は上表のとおりで、理容業では約4分の3、美容業では約3分の2が据え置いた。生活衛生業全体では値上げと据置がほぼ半々であり、理美容業の料金改定が慎重であることがうかがえる。
販売価格(料金)引上げの理由(複数回答、%)
| 業種別 | 仕入れ価格の転嫁 | 人件費増 | 経費増 | 価値の向上 | メニュー変更 |
|---|---|---|---|---|---|
| 理容業 | 67.7 | 16.7 | 33.3 | 19.8 | 11.5 |
| 美容業 | 70.4 | 27.5 | 28.2 | 36.6 | 19.0 |
| 全体 | 83.6 | 36.6 | 34.3 | 20.8 | 13.2 |
料金を値上げした企業に理由を尋ねた結果が上表だが、「仕入れ価格の上昇」が他の理由と比べて突出して多い。「人件費の増加」は生活衛生業全体で37%であるのに対し、美容業は28%、理容業は17%となっており、理美容業の賃金上昇の遅れがうかがえる。「価値の向上」はサービスの付加価値を高めて値上げしたケースで、美容業の37%は生活衛生業の中で最も高い。
引上げた企業の利益動向(%)
| 業種別 | 増加 | 不変 | 減少 |
|---|---|---|---|
| 理容 | 21.9 | 67.7 | 10.4 |
| 美容 | 12.0 | 65.5 | 22.5 |
| 全体 | 14.6 | 52.8 | 32.6 |
生活衛生業全体では「増加」が「減少」を下回った。とくに飲食業、ホテル・旅館業、食肉・食鳥肉販売業で顕著だった。仕入価格の上昇分を販売価格に転嫁したとみられるが、結果として収益は減少した。
今後1年間の販売価格(料金)の見通し(%)
| 業種別 | 引上げ | 据置 | 引下げ |
|---|---|---|---|
| 理容業 | 24.2 | 75.8 | 0 |
| 美容業 | 27.6 | 71.3 | 1.1 |
| 全体 | 42.3 | 57.0 | 0.7 |
生活衛生業全体では、仕入価格の上昇が今後も続く見込みから販売価格の引上げを想定する企業が多いが、理美容業では「据置」が7割を超えている。前述のとおり、他業に比べ経費に占める原材料費の割合が低いこと、さらに値上げ後の客離れを懸念していることが影響しているとみられる。
<調査概要>
時期:2025年9月中旬
方法:訪問調査
回答企業:生活衛生営業3290企業(理容業422企業、美容業457企業)
タグ: 料金改定, 料金改定動向, 料金改定動向調査, 日本公庫

























