篦頭(へらず)は、髪月代とほぼ同義語
Posted on | 10月 14, 2023 | No Comments
篦頭と書いて「へらず」と読みます。意味は、月代にして髷を結うことです。
髪結床に行って髷を結うことを「髪月代する」というように、「篦頭する」といいます。髪月代に比べると聞きなれない言葉ですが、江戸時代には使われていました。
幕末、忍藩(いまの埼玉県行田市あたり)の尾崎石城さんが書いた絵日記を紹介した『武士の絵日記』(角川文庫、大岡敏明・著)に登場します。わけあって独り者になった石城さんは3、4日に一回は髪結床に行きます。日記に「髪月代す」あるいは「篦頭す」が登場します。
「篦」の音読みは「ヘイ」で、訓読みは「へら」「の」のほかに、「すきぐし」「かんざし」があります。もともと梳き櫛のことを指す言葉です。髪結が使う髪結櫛、結上げ櫛などの梳き櫛から、「篦頭」は髪結を意味するようになったようです。
「髪月代」と「篦頭」がまったく同じ意味で使われた言葉なのか、髪月代は月代剃りに重点を置いた言葉で、篦頭は髷のなでつけに重点を置いた言葉でニュアンスに違いがあるのか、わかりません。
絵日記では、「篦頭に出て」(十二月六日、己未、快晴暖の日記)と髪結床に出かけたと書いてます。また別の日記では「篦頭にゆき、髪月代し」(七月一日、丁亥、快晴の日記)と、髪結床に行って月代を剃り、髷を結ってもらったと書いています。
この表現から推測すると、「篦頭」は髪結床の意味が強く、「髪月代」は髷を結ったり、月代を剃る行為を表現する意味合いが強いようです。もっとも、この一例だけではなんともいえません。
風俗や風習は地域差が大きいので、地域によって「髪月代」と「篦頭」が使い分けられていた可能性もありますが、石城さんは二つの言葉をほぼ同義に使用しています。
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