まつ毛エクステンション必修化の懸念
Posted on | 7月 7, 2023 | No Comments
「令和5年度以降の対応案」を決めて、とりあえず終了した厚生労働省の「美容師の養成のあり方に関する検討会」。新卒美容師を採用しても十分な技術力がなく、一人前になるのに時間がかかり、途中で辞めてしまう美容師が多い。その原因の一つとして指摘されたのが、実技試験・第二課題の「オールウェーブセッティング」です。いまのニーズとかけ離れた技術というのがその理由です。
「オールウェーブセッティング」の代わりに実技試験の候補の一つとしてあがったのが「まつ毛エクステンション」やヘアカラーでした。「まつ毛エクステンション」については試験課題として採用を検討するまえに、全国の美容師養成施設が必修として行うよう、厚労省・都道府県が後押しすることになりました。
必修課目の美容実習として「まつ毛エクステンション」を教えているのは、美容師養成施設の42.5%にとどまっている、という現状があるからです。選択科目として教えている養成施設を含めると全体の86.7%です。残りの13.3%の養成施設は教えていません(「美容師養成のあり方に関する意識調査」令和3年12月調査)。
「まつ毛エクステンション」については事故が多発したことから、平成20年課長通知で美容師法の範囲内とされ、平成30年度から日本理容師美容師教育センターの美容実習の教科書に「まつ毛エクステンション」が記載されるに至っています。
その後の事故件数は減っています(上のグラフ)。減った理由は美容師の業務範囲としたこともあるでしょうが、接着剤グルーが改良されたことも指摘されています。また、近年は「まつ毛クステンション」だけでなく、まつ毛パーマによる事故も発生しています。
「まつ毛エクステンション」を必修課目として美容実習を行うようなってから事故は減ったとはいえ、まだ発生しています。そんな背景があっての美容師養成施設での必修化ともいえます。
ところで、まつ毛エクステンションを必修の実習科目として採用していない養成施設の先生に話を聞いたことがあります。
「卒業生が少しでも早く一人前になるよう、美容室が必要とする基本的な技術を重点的に教えるには、ネイルやまつ毛エクステンションは選択実習にせざるを得ません」と話していました。カットやブローセット、シャンプー、ワインディング、ヘアカラーなどに力を入れて教育しているといいます。
まつ毛エクステンションをメニューにしている美容室はありますが、すべての美容室ではありません。美容室にとって必須の技術を重点的に教育するのは理にかなった教育方針といえます。
まつ毛エクステンションを必修の実習科目にする方針を決めた検討会ですが、その結果として美容室にとって基幹となる技術の実習時間が減ってしまう懸念があります。
一人前になるのに時間がかかり、途中で辞めてしまう美容師が多いのを正すために始めた検討会ですが、これでは途中で辞めてしまう美容師が増えてしまうかもしれません。
検討会で某委員が指摘してましたが、中途転職が多いののは卒業生を受け入れる美容室側に問題があるのかもしれません。
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タグ: まつ毛エクステンション, 理美容ラウンジ, 美容師の養成のあり方に関する検討会