やはり化粧品は皮膚には入らない
Posted on | 12月 3, 2010 | No Comments
ランゲルハンス細胞のはたらき 徐々に解明
世の中にはさまざまな化粧品が出回っていますが、その効果はというと、はなはだ疑問らしい。何らかの効果を出すためには皮膚へ浸透することが前提になりますが、皮膚には異物を通さないバリア・メカニズムがあるからです。
慶応義塾大学が2009年12月に発表した「皮膚が備える巧妙なバリア機構を解明~アトピー性皮膚炎など皮膚疾患の発症メカニズムに新たな展開」、この研究では、ランゲルハンス細胞のはたらきを可視化することに成功し、「ランゲルハンス細胞が、顆粒層にあるバリアジャンクションと連携して、皮膚に浸入してきた異物に対応する」ことを突き止めました。
この研究は、皮膚のもつバリア機能の解明に新しい展望を開くもので、アトピー性皮膚炎、皮膚アレルギーの解明、さらにランゲルハンス細胞のはたらきにより、食物アレルギーや喘息の予防や治療も可能になることが期待される画期的な研究と高く評価されています。
下の図が慶応大学が公開したランゲルハンス細胞とタイトジャンクションの模式図です(同大学発表のニュースリリースより)。
平常の場合は、
角層(角質層)の下の顆粒層にあるのがタイトジャンクション(SG2層)で、細胞と細胞の隙間をシールして人間の皮膚全体を覆っています。
このタイトジャンクションは、細胞の隙間から水が体外に漏れ出して行ってしまうのを防ぐとともに、角層を通り抜けた細菌や抗原、また化粧品成分などの異物が、細胞と細胞の隙間を通り抜けて体内に侵入してくるのを防いでいると考えられています。
ランゲルハンス細胞は表皮の下層(有棘層)に存在し、普段は休止状態にあります。休止状態にあるランゲルハンス細胞は、樹状突起を表皮の上層に向かって伸ばしていますが、樹状突起の先端はタイトジャンクションバリアより内側にとどまっています。
異物が侵入してきた場合は、
角層から異物が侵入したりするとランゲルハンス細胞が活性化し、樹状突起が伸長し、タイトジャンクションを突き抜けて、角層の直下にまで到達することを発見しました。
さらに、ランゲルハンス細胞は、タイトジャンクションバリアの外側に出た樹状突起の先端から、外来抗原を取り込んでいました。樹状突起と表皮細胞との間には新しいタイトジャンクションが作られ、バリア機能が保たれていました。
つまり、抗原取り込みを行っている間、ランゲルハンス細胞の樹状突起と表皮細胞との隙間から水が漏れ出したり、逆にその隙間を通って抗原が体内に入ってきてしまったりするのをタイトジャンクションが防いでいるのがわかりました。
この研究による可能性、
これまで、角層を通り抜けた抗原がどのように免疫系の細胞に捉えられるのか、明らかではありませんでした。今回の発見により、角層を通り抜けて侵入してきた抗原は、表皮のタイトジャンクションバリアによって体内への無制限の侵入を阻止される一方、ランゲルハンス細胞により捕らえられて免疫系に提示されると考えられました。
この抗原を病原体と考えると、ランゲルハンス細胞の働きにより、今後侵入してくるかも知れない病原体をあらかじめサンプリングして免疫をつけておくことができるのではないかと考えられます。
一方、この抗原をアレルゲンと考えると、ランゲルハンス細胞の働きによりアレルゲンが取り込まれて、アトピー性皮膚炎などの皮膚のアレルギー疾患を起こしている可能性があります。
また、食物アレルギーや喘息などのアトピー性疾患も、最初は皮膚を介した抗原感作が原因になっている可能性が指摘されており、今回発見されたランゲルハンス細胞とタイトジャンクションの協調作業が、アトピー性皮膚炎だけでなく食物アレルギーや喘息の発症にも関わっていないか、今後検討していきます。
資料
慶應義塾大学医学部2009年12月3日発表
「皮膚が備える巧妙なバリア機構を解明
アトピー性皮膚炎など皮膚疾患の発症メカニズムに新たな展開」
より。
この研究でも分かるとおり、化粧品の成分が浸透するのは、角層までです。角層は化粧品によってうるおうことはできますが、その下の有棘層にあるバリアによって異物はブロックされてしまいます。
ランゲルハンス細胞が何かの理由ではたらかない場合は、角層の下の層まで入りこんでしまうこともありますが、それは皮膚にとって、また免疫機能にとって良くない状態といえます。
薬事法で、化粧品に効果・効能は認められていませんが、その正しさを証明した研究といえます。
タグ: ランゲルハンス細胞, 理美容カフェ