衛生行政報告と経済センサスのデータの違い

Posted on | 1月 30, 2023 | No Comments

理美容店の店舗数、従業者数はデータによって大きな開きがあります。いい例が厚生労働省の「衛生行政報告」と経済産業省の「経済センサス」です。

データは2014年と古いですが、
衛生行政報告では、
理容所13万1687店、理容師24万0017人
美容所22万8429店、美容師47万1161人
経済センサスでは
理容店10万5635店、従業者数21万8450人
美容店16万9196店、従業者数45万2974人
店舗数の差が際立ちますが、センサスのほうが少ない。
この差は、2015年以降も同様です。

衛生行政報告と経済センサスとでは目的も手法も違うので、結果が違うのはある意味、当然なことです。
衛生行政報告は、保健所が理容所美容の開設届、廃業届、従業する理容師美容師を集計して都道府県、政令市などの単位で報告された数字を厚労省の生活衛生課が集計した数値です。毎年3月末時点で締めた届出を集計し、毎年発表します。

経済センサスは、専門の調査員が個々の事業所を調べた調査票を集計した数値です。2年ごとに基礎調査と営業面に重点を置いた活動調査を行っています。近年は抽出調査になっているようです。
衛生行政報告は理容師法美容師法に基づいて、衛生部局の業務報告による数値ですが、経済センサスは同法には関係なく調査します。例えば保健所に無届でも営業していれば調査対象になりますし、理容師免許美容師免許の有無にかかわらず、その店で従業している人を従業者として数えます。
となると、経済センサスのほうが数が多く出てもおかしくないのですが、実際は逆です。

考えられるのは、調査員が理容所美容所を見落としている可能が考えられます。マンションの一室や雑居ビルの片隅で営業している店は見落としされやすい。また、あえて隠れ家的に営業している理美容店もあります。

兼業で理美容店を営んでいる人もいます。農村部などでは雨天のときに店を開けて晴れているときは農業をする、都会地では隣接する飲食店など他業と兼業しているケースもあります。本来なら兼業している業務はすべて調査対象になりますが、実際には主要な業務だけについて記載した調査票で済ませてしまう。被調査者の煩雑さを避けるために、便宜的に簡略することもあるといいます。

衛生行政報告は、届出が確実に行われていれば、信頼できるデータとして利用できます。開業時には、まず間違いなく保健所に開業届出を出します。ところが、廃業時に廃業届を出さずに店をたたんでしまうケースは想定されます。夜逃げ同然にやめてしまったり、経営者が突然、重篤な病気になってしまった場合などが考えられます。
ただしどれくらいの無届の廃業があるかは定かではありません。経済センサスとの差から、相当数あるのではないかと推測されますが、あくまでも推測に過ぎません。
結局のところ、衛生行政法報告、経済センサスどちらが信頼できる数値なのか、わかりません。

ところで行政（厚生労働省）は、この二つのデータを使い分けています。
理美容業の衛生に関するテーマの会議などでは衛生行政報告が使われます。厚生労働省の会議は衛生行政に関するテーマが多いので衛生行政報告のデータが使われることが多いのですが、理美容業の振興や経営に関するテーマの会議では経済センサスのデータが用いられることがあります。臨機応変、使い分けが肝要かもしれません。

なお、衛生行政報告と経済センサスのほかに、有力なデータとして国勢調査があります。国勢調査は従業者だけのデータになりますが、2015年国勢調査では、理容業に18万3620人、美容業に38万9210人が従業しています。経済センサスよりもさらに少ない従業者数です。

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