理美容業界の統計問題
Posted on | 2月 20, 2019 | No Comments
平成が終わろうとしている2019年、第198回国会では「毎月勤労統計」の問題が議論されていますが、理美容業界でもこの業界の根幹を把握するうえで最重要な店舗数、技術者数のデータに関するデータの信頼性が疑問視されています。
理美容業界を表す基本データには、厚生労働省が毎年発表する「衛生行政報告」と国の基幹統計の一つである、経済産業省の「経済センサス」があります。この二つの統計データの数値が大きく乖離しているのです。
「経済センサス」平成28年活動調査では、理美容合わせた店舗数は25万5701店なのに対し、同年の衛生行政報告では36万5899店。数で11万余、率で43%も違います。従業者は店舗数ほどではありませんが、25%ほど違います。
二つの統計については、目的も集計方法も違うので誤差がでるのは理解できますが、この違いは許容範囲を超えています。
経済センサスは平成21年(2009年)に初めて実施されました。その前身の「事業所・企業統計」時代から両者の誤差はありました。平成の時代が始まったころは、誤差の理由として、「廃業届を出さずに閉店してしまう理美容店が少なくないため衛生行政報告の数値が多くなる」ということで納得していました。しかし、その誤差は平成の時代を通して拡大する一方、これだけの誤差が生じては無届による廃業だけでは説明できません。
技術者については、厚生労働省のデータは登録された理容師・美容師の有資格者を数えますが、経済産業省は受付業務などを行う無資格者の従業員も数えます。店舗数は経済産業省の調査では調査員によるものですが、近年マンションの一室で隠れ家的に営業している店もあり完全に把握できないという事情はわかります。
しかし、そんな調査方法の違いや事情を考慮しても、両省の調査結果の違いは半端ではありません。
いま国会で問題になっているのは調査で不正があったのでは?という疑義からですが、理美容関係の調査は不正とは無縁なものの、これだけ数値に開きがあるのは問題です。しかも、この差異が認識されて数年経つものの放置されたままです。
統計に関してよく引き合いに出される話ですが、戦後の吉田茂首相が統計データをもとに進駐軍のマッカーサー司令官に食糧援助を支援する際、数百万人分の支援を要求したのに対し、マッカーサーは数十万人分の食糧を供出し、これで餓死者も最低限に抑えることができました。後日、マッカーサーが日本の統計の不正確さを指摘したところ、吉田首相は正しい統計が日本にあればアメリカと戦争はしなかった、と答えたという話です。
国はもちろん理美容業界にしても、正確なデータがないことには何をするにも正しい判断はできません。国からみれば取るに足らない理美容の業界かもしれませんが、平成の次の時代、理美容に関するデータの見直しが行われることを期待したいものです。
タグ: 理美容ラウンジ, 経済センサス, 衛生行政報告