井手添敬子さんが語る「鳥取型」福祉美容
Posted on | 11月 22, 2012 | No Comments
福祉理美容と一口に言っても多様な形態がある。
行政が発行する福祉理美容券を持参した高齢者らに施術するものから、介護の知識技術を習得した理美容師が来店できない人の自宅に出向いて行う出張福祉理美容もあるし、福祉施設や介護施設に出向いて施術するものまで様々ある。
高齢化がすすむ昨今、店舗をバリアフリーにして車椅子での来店できるようにするなど積極的に要介護者を受け入れている店舗は増えているが、福祉理美容をさらに一歩進めて、福祉理美容を核にした多機能福祉施設が注目されている。
NPO法人「楽」。鳥取で事業化していることから「鳥取型」福祉事業とも称され、福祉関係者や行政から高い評価を得ている。
福祉美容室として障害者や高齢者に優しい店を作り、福祉美容を行うだけでなく、障害を持つ人を積極的に雇用し、タオル洗いやケープ洗いなどの補助業務を行ってもらう。もちろん障害者には給与を支払うが、障害者への就業支援事業として行政から給付金が支給される。
この福祉美容室を拠点に県内の介護施設や福祉施設へ出向いて福祉美容の施術を行っているのは言うまでもない。
福祉美容室の隣には障害者らが創作した作品を展示するコミュニティカフェを併設し、地域に開放している。
障害者は異才のある人が多く、彼らが創作した作品(アウトサイダーアートという)のアート展も開き、障害者の活動を支え、多くの人との交流を深めている。
現在、中古住宅2棟を購入し、福祉美容室を核に、コミュニティカフェ、生活介護の多機能福祉士施設を運営している。
この事業は、鳥取県の基盤整備基金から返済不要の補助金助成を受けている。行政から支援を受けるには、それ相応の手続きを経なければならないが、「素人でも努力すれば可能」と美容師で「楽」理事長の井手添敬子さんは語る。これらの福祉事業は「得た純利益を施設を利用される障害者に配分する」という姿勢が大切だ、と締めくくった。
井手添敬子さんは、世界大会の出場経験もある美容師で、自身が交通事故で入院した体験から福祉美容の必要性を痛感し、福祉美容の事業に取り組んだ、という。
(日本美容福祉学会・第12回学術会議より)
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