髪結床は将棋倶楽部!?
Posted on | 8月 3, 2022 | No Comments
髪結床にはいろいろな客がやってきます。髪結床の客待ちには将棋盤と駒が置いてあり、髪結に来たのを忘れ将棋に熱中する客もいたようです。
〇詰み際になって 髪結せっつくなり (安元松5)
素人将棋は序盤戦は手早く指しますが、詰み際になってから長考することが多い。髪結の順番がきても指し手を考えている客をせかす髪結です。
〇手見禁になさいと髪結待っている (安三桜3)
手見禁とは、「待ったなし」のことです。待ったばかりしていては、なかなか勝負がつず、髪結は仕事ができません。上の句と同様、勝負をせかす髪結です。
上の2句は、『川柳評万句合勝句』から採録しました。安元とは安永元年、安三とは安永3年になります。
○あしたでも剃ってくれろと飛車が成り (五37)
将棋に夢中になるあまり、髪結のことなどどうでもよくなったようです。この川柳は『誹風柳多留』から採録しましたが、ほぼ同時代の『川柳評万句合勝句刷』に、
〇あしたでもすってくれろと角行をなり (明五満3)
があります。偶然似た句なのか、どちらかが剽窃(パクった)したのか?
将棋の勝負の途中で髪結の順番が来て、将棋を終える客もいたでしょうが、たいていの客はなにがしかの金品を賭けて将棋を指していたのかもしれません。
〇日半日息子髪結床に居る (安二叶2)
仕事もせずに髪結床で日がな一日、将棋をさして遊んでいる困った息子です。
〇安息子五六人がいる髪結床 (天八10 5)
安息子は、バカ息子と理解してさしつかえありません。行くところもないバカ息子が常時5、6人もいられては髪結も困った? 髪結も一緒になって雑談したり、将棋に興じていたかもしれません。江戸の町風景の一コマです。
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