若い女性は避けて通る髪結床
Posted on | 9月 14, 2022 | No Comments
髪結床は、月代を剃り髪を結うだけでなく、町人の寄合い所としての利用されていました。
髪を結う床の奥は客待ちで、そこには将棋盤や洒落本が置いてあり、順番待ちの客が暇を潰してました。やってくる客は独り者の男性が多い。話題はおのずと遊郭や岡場所、遊女の話なります。置いてある洒落本は近くにある遊郭の情報を記述したものを選んで置くぐらいの気をつかっていたかもしれません。
髪結床の客には以前紹介したように、旦那衆や将棋好きの客もいましたが、髪を結ってこざっぱりしたあと、遊郭に出陣する客もいた。風呂屋、髪結床、それから遊郭、というのが一つのコースになっていたようです。
髪結床のイメージは女郎好きのスケベ野郎が集まる場所です。しかもガサツで野卑な男性が相場になっています。若い女性にとって、髪結床は鬼門でした。前を通るのはできれば避けたい存在だったようです。
〇油絵の障子を明けて毒を言い (二五3)
若い女性が前を通ると、若い女性にとって耐え難い言葉をかける客もいたようです。
油絵の障子は、大暖簾ととともに油絵障子は髪結床の看板になっていました。奴の絵が多かったのですが、なかには売れっ子の役者絵を描いた障子絵もありました。
〇役者絵の障子を明けて毒を言い (安六五五会)
〇荒っぽく女を誉める髪結床 (明八桜5)
〇髪結床して遣りたいと過言なり (安元礼5)
これらの川柳も前句と同様です。
若い女性は避けたい髪結床ですが、やむを得ず通るときは、、、
〇髪結床の前で日傘が横になり (貞房画柳樽七5)
横にした日傘に隠れて通り過ぎようとしました。
〇髪結床ごぜのお袋どなり込み (明四仁3)
この川柳は、目が見えずに髪結床の前を通りかかった若い女芸能者のこぜ(盲女)をからかった髪結床にたむろする連中に対し、怒ったこぜのお袋が怒鳴りこんできた情景を詠んだ句です。
品の悪い客が多いのですが、悪態をつくのは若い女性だけで、年増の女性は対象外だったようです。
〇気の強い女 髪結床で聞き (二七22)
ふつうの女は敬遠する髪結床で、道や行先を尋ねる女性もいました。
こういう川柳を並べると、髪結床に女性は無縁なように思えますが、実際は髪結の女房らが仕事を手伝っていて、町奉行から髪結女房が月代を剃ることを禁止する触れが出されています。天保期以降には、女髪結が髪結床経由で女性からの仕事を受けることもあったようです。
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