毛のようなもの
Posted on | 7月 14, 2020 | No Comments
「毛」は軽い。この軽さから、「たいしたことがない」の意味で使われる慣用句があります。「毛の生えたようなもの」「毛のようなもの」など。『広辞苑』は、「わずかにまさっているが、たいして変わらないものの意」と説明しています。
毛(もう)は単位としても使われます。やはり極小の単位です。1厘の十分の一です。1厘の長さは0.30303ミリメートルです。1厘も極小ですが、一毛はさらに極小です。
重さでは、一貫の百万分の一。一貫は3.75キログラムですから、一毛は0.00375グラムになります。銭貨の単位では1銭の百分の一。1銭は百分の一円ですから、1毛は一万分の一円になります。具体的な数字は別にしてイメージとしては、ミクロ、ナノといったところでしょうか。
「毛のようなもの」と、ほぼ同じなのが「九牛(きゅうぎゅう)の一毛(いちもう)」です。「たくさんの中のきわめて少ない部分」のことで、ありがたい希少部位のことかと思ったら、やはり「取るに足らないこと」でした。使い方の例として「総額からみれば福利厚生費など九牛一毛だ」。
九牛は九頭の牛、つまり多くの牛のことで、多くの牛の中のたった一本の毛のことです。この成句は、司馬遷が友人に宛てた手紙によります(『明鏡成句辞典』)。
「毛の生えたようなもの」でも、これが心臓から生えると、意味はまったく違ってきます。「心臓に毛が生えている」となると、「非常にあつかましい態度をとる人の形容」(『広辞苑』)になります。
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タグ: 広辞苑, 毛, 髪にまつわるエトセトラ