毛を吹いて疵を求む 「吹毛」
Posted on | 6月 14, 2020 | No Comments
「毛」を『広辞苑』で引くと、まず「哺乳類の皮膚に生える糸状角質形成物」とでてきます。
続いて「皮膚の毛嚢(もうのう)におさまる部分を毛根、外にあらわれた部分を毛幹、先端を毛先という」と説明があります。
これが1項目で、以下、2鳥の羽根、から7項目まで続きます。
参考までに7項目は「鯉の鱗(うろこ)」となっています。これは狂言に「この鯉に限ってうろこをふくとは申さぬ。毛をふくともうす」というセリフから採用したものです。さすが『広辞苑』です。
そもそも「毛」という言葉自体、身近すぎて、辞書で調べる人などあまりいません。よほどの物好きな暇人か、酔狂な人だろう。かくいう編集子もその一人です。
辞書で「毛」を調べていると「毛」には「軽い」、「柔らかい」、「密集」、「外見」などのイメージがあるのがわかります。このイメージから生まれた慣用句がいくつか目にとまりました。
その一つが「毛を吹いて疵(キズ)を求む」です。
「毛を吹き分けまでして、小さな疵を探し出す」の意です。略して「吹毛」(すいもう)。人の欠点探し、あら探しをすることです。
この成句は、「毛」が密集している状況をイメージして作られています。密集した毛をかき分けてまでして、あらを探すということです。
この成句では、無理してまで欠点を指摘するのは、逆にその行為が非難を受けることになると警告しています。
「毛を吹いて疵を求む」、漢書『中山靖王勝伝』が原典。以上、『広辞苑』より。
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