髪は神につうず
Posted on | 6月 14, 2019 | No Comments
「髪は神につうず」と古来からいわれ、畏敬の念を持たれてきました。発音が同じだからかもしれません。
改めて広辞苑(第6版)で「髪」を調べると、
①頭部に生える毛。(以下、万葉集からの引用あり)
②頭部の毛を結った形。かみかたち。
とあります。
髪の毛そのものと、髪形を指しています。ただ②では、結った日本髪や丁髷を髪として狭義に規定しています。結った髪に限定している理由はわかりませんが、いまのヘアスタイル全般を含んだほうが自然な気がします。
一方の「神」は、
①人間を超越した威力を持つかくれた存在。人知を以てはかることのできない能力を持ち、人類に禍福を降ろすと考えられる威霊。人間が畏怖し、また信仰の対象とするもの。(以下、髪の項同様、万葉集からの引用あり)
以下②~⑥までありますが、長いので省略します。
古(いにしえ)の人々は、なぜ髪を畏敬したのでしょうか?
ひとつには、髪の毛が生えて伸び続け、そして老いると白く変わる、そんな髪の毛の生理上の変化に対し、科学の知識がなかった人々は畏怖の念をもって接したのかもしれません。また、死後もわずかながら伸び続ける毛を畏敬したのかもしれません。古代の人々にとって、髪の生理現象は不思議な存在だったのでしょう。
庶民に埋葬の風習がない古代、死体は腐り朽ち果てるのに、髪の毛は長く現況をとどめているのも不思議だったのかもしれません。
古の人々の信仰心は素朴です。森羅万象、理解できない事象に神秘性を感じて崇めていました。山の神、海の神、木の神、岩の神、鳥や風も信仰の対象でした。自らの一部でありながら不思議な存在の髪に対しても畏怖し大事にしているうちに信仰の対象になったのかもしれません。
髪、とくに女性の髪はしばしば神社や仏閣に奉納されています。義経が愛した白拍子の静御前、北条政子はじめ著名な女性が奉納していますし、無名な女性の髪も多く奉納されています。一説には奉納先の神社仏閣の災い除けとして女性の髪を奉納したと伝えられています。
男性の髪も奉納されている例はありますが、こちらは仏門に入るさい剃髪したときの髪を納めたといいます。いづれにしても「髪は神につうず」です。
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