セファランチンの「男性型脱毛症」効果が再評価
Posted on | 1月 5, 2016 | No Comments
古来から民間治療薬として使われている、ツヅラフジ科植物タマサキツヅラフジから抽出したセファランチンが「男性型脱毛症」に有効であることが再評価されている。
セファランチンは「男性型脱毛症診療ガイドライン(2010年版)」でエビデンス評価がC2(勧められない)になってからは外用薬は製造されていないが、その有効性は臨床医師によってしばしば確認されていることから、改めてその効用について、乾重樹大阪大学大学院医学系研究科 皮膚・毛髪再生医学寄付講座准教授が、基礎的および臨床的検討を行い、昨年12月に開催された「第20回日本臨床毛髪学会 学術集会」で発表した。
以下は「毛髪ケアのルネッサンス:ADSセファランチンRのエビデンス」のテーマで発表された内容(概要)。
セファランチンはツヅラフジ科植物タマサキツヅラフジから抽出したアルカロイドである。
タマサキツヅラフジは中国や台湾で自生し、民間薬として使われていた。
1914年に早田文蔵がStephania cepharantha Hayataという学名で報告し、さらに1934年に近藤平三郎がその有効成分を精製し、学名にちなんでセファランチンと命名した。
当初、結核やハンセン氏病治療薬として使われたが、その後生体膜安定化作用、抗アレルギー作用、免疫調整作用などが明らかとなり、臨床実地においては放射線による白血球減少症、円形脱毛症、粃糠性脱毛症、滲出性中耳炎、マムシ咬傷を適応症とする内服薬として使用されてきた。
脱毛症について「円形脱毛症診療ガイドライン2010」で内服薬がC1(行うことを考慮してよい)と推奨されているが、セファランチンの外用については「男性型脱毛症診療ガイドライン(2010年版)」においてまだエビデンスがないということから、C2(根拠がないので勧められない)と評価された。
発売されていたセファランチン外用ローション薬用クロウR(化研生薬)は製造中止となり、セファランチン外用療法はされなくなった。
しかしながら、臨床諸家よりその有効性がしばしば観察されるとの声もある。
我々はセファランチンのリポ化製剤であるADSセファランチンを用いて、その毛成長への効果について基礎的および臨床的検討を加えた。
まず培養男性型脱毛症毛乳頭細胞に0.1および1.0μg/mLのセファランチンを添加したところ、IGF-1 mRNA発現量が増加した。セファランチン10mgを内服した場合、成人では血中濃度は1ng/mLと上記添加濃度と比べ著しく低値である。したがって、より高い局所濃度が期待できる外用がIGF-1誘導による毛成長促進効果が期待できる。
そこで行った男性型脱毛症の成人男性22名のADSセファランチンローション6ヶ月外用臨床試験では、毛髪数および毛直径を増加させる傾向(p<0.1)があり、毛成長速度を有意に増加させた(p<0.01)。
以上より、ADSセファランチンが男性型脱毛症に対する新しい毛髪ケア成分となることが示唆された。
セファランチンという歴史の古い薬の新しいエビデンスが、一度衰退した毛髪ケアの復古(ルネッサンス)を導くものと期待される。
タグ: ヘアケア, 脱毛症