爪紅 「つまべに」「つまくれない」
Posted on | 9月 14, 2024 | No Comments
いまネイルアートは、爪というごく狭い世界の芸術作品ともいえる存在です。その技法、器具、用剤も日々進歩し、次々と新しく意匠を凝らした作品が誕生しています。
近年、個性的な美しいネイルをしている女性は多い。最近では美容意識の高い男性もしています。ネールアートは拡大し続けています。
日本のネイルの歴史は古い。江戸時代の近世には行われていました。
女児が鳳仙花を使い爪をほんのり赤く染めていました。
「鳳仙花、女児此花と酢漿草(かたばみ)の葉をもみあわせて爪をそむ」と『大和本草』(貝原益軒、18世紀初めごろ)にあります。
女児の一つの遊びで行われていたようです。紅色が長く残っていれば恋が成就する、ともいわれています。昭和の時代にも同様の遊びをしていた女児がいました。江戸時代以前にも行なわれていた可能性は高く、日本の女児の伝統的な遊びだったかもしれません。
江戸時代は吉原の遊女が爪に紅をさしていたことが知られています。当時の高級品だったベニバナからとった紅を使っていました。爪紅です。「つまべに」とも「つまくれない」ともいいます。
鳳仙花も「つまべに」「つまくれない」の別称があります。風情のある爪化粧です。
『女重宝記』(艸田寸木子/苗村丈伯、17世紀末ごろ)に「白粉にかぎらず紅なども、頬さき、口びる、爪さきにする事、うすうすとあるべし」とあるので、遊女に限らず地女も江戸時代前期には爪に紅をさしていたのがうかがえます。『女重宝記』は紅は薄くさすものです、と指南しています。
吉原の遊女のした爪紅は、地女のそれより濃かったかもしれません。
ネイルの文化は、日本にむかしからあった文化の一つといえます。
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