衛生行政報告例と経済センサスにみる理美容室数

Posted on | 11月 8, 2023 | No Comments

令和4年度の衛生行政報告例が発表され、年度内の使用確認件数は理容所2018件、美容所1万4934件ありました。

報告例では年度末現在の全国の施設数を発表していますが、これは行政報告を積算した数値で統計データとは別物です。

理容室美容室の店舗数は、国の基幹統計の一つである「経済センサス」で把握できます。
最新の令和3年経済センサス活動調査によると、理容室8万7048店、美容室16万2431店になります。
ところが、令和4年度衛生行政報告例によると、全国の施設数は理容所11万2468件、美容所26万9889件です。年度にズレはあるものの3割ほどの誤差があります。

誤差の範囲で済まされる差ではありません。
どちらかが間違っているのでしょうか？　いえ両方とも正しい。
目的も違うし、手法も違えば、当然結果も違ってきます。

衛生行政報告例は保健所のその年度の確認件数を集計した数字です。開業届の申請による臨店検査や指導の件数を積み上げた数字です。新規開店が多いと思われますが、それだけではありません。一例を上げれば、店舗を改装するため仮設の店舗を作ったときも確認を受けます。改装店舗が完成したときも確認を受けます。移転や経営者の名義変更なども考えられます。
廃業するわけではないので、確認件数だけが増え続けることになります。その結果が経済センサスとの差になって現れます。

衛生行政報告例はあくまでも保健所の業務報告です。これはこれで問題ないのですが、あえていえば「施設数（年度末現在）」との表記は「累積確認数」などと変更したほうが誤解を招かないのでは、と老婆心ながら思うのです。

昭和の時代は経済センサスの前身の各調査（＊）の参考値として衛生行政報告例を活用していましたが、これだけの差があると参考にもなりません。かといって衛生行政報告例が価値がないわけではありません。年度内の確認件数は、理容業美容業の業勢をみるのに役立ちます。

理容師数、美容師数についても同様なことがいえます。
国家試験合格者数、免許登録者数については理容師美容師試験研修センターが発表してますが、経済センサスの理容業美容業の従業者数、国勢調査の理容業美容業の就業者数は、店舗数ほどではありませんが、数字が違います。これはそれぞれ目的、定義が違うからです。

当の厚生労働省は、衛生行政報告と経済センサスのデータを使い分けています。衛生行政に関するテーマでは前者、業界振興に関するテーマでは後者のデータを使用することが多い。要は目的に応じて使い分けることです。

ちなみに、2023年の理美容室数の推計値は理容室8万3000店、美容室16万0000店を見込む。これは令和3年「経済センサス活動調査」（2021年6月調査）結果の理容室数87,048店、美容室数162,431をもとに、2001年以降実施された「サービス業基本調査」、「事業所・企業統計調査」の数値、さらに衛生行政報告例の新規確認件数（廃業店数の推計値）などを踏まえて、当メディアが独自に推計した数値になる。（推計値の誤差は理容室に比べ、美容室のほうが大きい。）

（＊）サービス業基本調査、事業所・企業統計調査など

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