撥水性の高いスクワレンで皮膚を保護
Posted on | 5月 14, 2020 | No Comments
当コラム「毛の起源 3つの説」(http://ribiyo-news.jp/?p=28681)で、なぜ皮膚に毛が発生したのかを説明する3つの説を紹介しました。その一つに、皮脂腺から生まれた、という説があります。
大半の皮脂腺は毛孔に開口し、皮膚表面に排出します。その際、毛のキューティクルの形状が皮脂を汲み出すのに適していることが、皮脂腺から毛が発生したという説の根拠になっています。
ところが、皮脂腺には毛のない皮膚に直接、開口しているものがあります。これを独立脂腺といい、口唇、乳輪、肛門、眼瞼(がんけん)などに分布しています。前述の起源説の根拠は完璧とはいえません。
皮脂腺の成分は、「トリグリセリド、スクワレン、ワックスエステル、コレステロール、コレステロールエステルである」(日本化粧品技術者会・ライブラリーより)といいます。
この中のスクワレンという成分は撥水性が高い性質があります。哺乳類のなかでもビーバーなど数種類の動物がスクワレンを皮膚や毛に塗布して水をはじきます。コレステロールにも水をはじく性質はありますが、性能が違います。
ヒトは獣毛を失ったことで、皮膚をより強固に守るために、スクワレンを含んだ皮脂を分泌し皮膚にまんべんなく被うようになったのだと思います。獣毛が体毛になって、体温の上昇に耐えられるようになったのも進化なら、スクワレンで皮膚を被うようになったのも進化といえそうです。
皮脂成分のトリグリセリドは分泌されると分解されて、保湿機能があるグリセリンになります。このグリセリンとスクワレンは加齢とともに減少します。加齢とともに肌が乾燥してくるのは、体内から補給される水分やコレステロールが減ることもありますが、皮膚表面のグリセリンやスクワランが減少することも一因です。
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