シェービングの習慣は第一次世界大戦後に普及
Posted on | 12月 2, 2019 | No Comments
男性のヒゲは、社会を映す一つの文化といえます。21世紀のいまは多様性の時代で、髭を蓄えている男性もいますし、毎朝剃っている人もいます。
髭はその人の自己表現、個性として認められています。ただ仕事によっては髭にしずらい職業もあるので、髭派よりはシェービング派が多いようです。
男性の髭剃りが広く行われるようになったのは20世紀になってから。使い捨ての安全剃刀が普及するようになってからです。
家庭用の安全剃刀は18世紀には開発されていましたが、普及しませんでした。鞘に収まり安全なのですが、使っているうちに切れなくなってしまう。研ぐことで切れ味が回復するのですが、これが素人には難しかったのです。
西洋の理髪師、日本の床屋にとってレーザー、剃刀は大事な商売道具です。この商売道具を使いこなすには、剃る技術と同じくらい研ぐ技術も必要です。素人は、見よう見まねで剃れたとしても研ぐことができません。
使い捨ての安全剃刀を開発したのは、キング・キャンプ・ジレットさんです。1903年にT字型の使い捨て安全剃刀を開発し、世の男性は研ぐことから解放されました。この安全剃刀が開発され、一気にシェービングの風習が広がったかというと、そうではありませんでした。ジレットさんの作った安全剃刀はまったく売れなかったといいます。
安全剃刀の普及には第一次世界大戦が契機になっています。毒ガスが兵器として使われ、防毒マスクの装着が兵士に求められたからです。髭が生えていては防毒マスクが密着しないために髭を剃る必要があったからです。米陸軍の求めに応じてジレット・セーフティ・レーザー・カンパニーは300万セットの安全剃刀を供給しました。
復員した陸軍兵士は平和な時代になっても髭を剃り、これが習慣として広まったといいます。
シェービングの習慣が広まった背景には、浴室の普及もありました。19世紀までは米国の住宅には浴室はなく、入浴の習慣がなかったといいます。それが20世紀になると浴室が一般市民の住宅に普及しました。髭剃りはこの浴室で行います。髭剃りの習慣には浴室の普及も関係しています。
髭は戦争との関係が少なからずあります。帝政ローマ時代のむかし、男性は公衆浴場で髭を処理しましたが、これは髭があると白兵戦の際、髭を摘まれ殺傷される可能性があったからといわれています。安全剃刀のない時代です。ローマの公衆浴場からはヒゲを抜く際の男性のうめき声が聞こえたといいます。
21世紀のいま、ジレット社の安全剃刀は世界一のシェアを誇ります。英国のウイルキンソン社、米国のシック社が世界の三大安全剃刀メーカーとされています。日本ではシックの人気が高く、とくにプロの理容師さんが使う剃刀の刃はシック社のものが多い。
もちろん21世紀のいまでも本山砥で研いで、ストラッピングで刃を仕上げてヒゲに当たる理容師さんはいます。
写真は、1917年のジレット社の安全剃刀の広告です。下の帯びに白抜き文字で「NO STRAPPNG NO HONING」とあります。研磨、ストラッピング(皮砥による研磨)が不要なことが大きな宣伝ポイントだったのです。
*資料・『脱毛の歴史』ほか
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