体毛と発汗作用の関係
Posted on | 7月 14, 2019 | No Comments
髪の毛は10万本、身体全体の毛は500万本あるといいますが、個人差が大きいのでアバウトな数字です。毛髪はもちろん体毛の一部です。
太古のむかし、人類の祖先は全身が濃い体毛で蔽われていました。
それがなぜ、頭髪、眉毛など一部を残して進化の過程で薄くなったのでしょうか?
進化論のチャールズ・ダーウィンさんは、男性が体毛の薄い女性を好んだから、と推察したといいます。その説を聞いたとき、ダーウィンさん、面白い冗談を言う人だと思ったものですが、19世紀の当時はダーウィン説を信じた人もいたようです。
最古の人類(猿人)が現れたのは約500万年前のアフリカといわれています。180万年前には原人といわれる進化した人類が登場します。原人は二足歩行し、打製石器などの道具を使用し、アジアやヨーロッパにまで進出したといいます。
いまの人類、新人類が登場したのは4万年ほど前です。使う道具も進化し1万年前には磨製石器を使用したり、家畜を飼うようになりました。
体毛が薄くなった理由の一つは人類が二足歩行を始めたことにあります。二足歩行することで、脳の体積が大きくなり、知能が発達しました。しかし脳は熱に弱く、長時間37度を超えていると傷害をおこすといいます。
濃い体毛は、外的衝撃や寒冷な気候から身体を守るといおう大きな役目がありますが、これが体温を下げる妨げになったのです。
ヒトは狩りなどで活発に活動しました。脳が大きくなったヒトは活動で上昇した体温を効率よく冷やすシステムが必要です。その装置が発汗です。ヒトは汗をかいて、その汗を蒸発させることで体温を下げるシステムを得ます。その際、全身を被う濃い体毛は汗の蒸発を妨げるこことになります。そこで体毛が徐々に薄くなり、スムーズな汗の蒸発が行われ、効率よく体温を下げることができるようになった、という説です。
ほ乳類のなかでも最速といわれるのがチーターです。しかし最速で走れるのはせいぜい1分程度です。疲れて動きが鈍くなったチーターをヒトは簡単に仕留めることができました。
犬が暑さで舌を出しているのは、舌から水分を蒸発させ体温を下げるためといわれています。
大量の汗をかいて効率よく体温を下げるシステムを手に入れたほ乳類はヒトだけです。
体毛が薄くなって、状況が大きく変わったことがいくつかあります。
一つは母親が育児に専念することになったことです。猿やチンパンジーなどをみればわかりますが、子猿は母親の体毛にしがみついて、一緒に行動することができます。母猿も子猿を連れて餌を取ることができます。しかし、体毛の薄くなったヒトはそういうわけにはいきません。
母親は保育に専念し、餌を確保して食べさせるのは父親の役割になります。こうしてヒトは家族を形成するようになったといいます。
*上の画像は、約420万年前ごろ出現したといわれる猿人のアウステロピテクスの想像図(東京国立科学博物館のルーシー)。すでに体毛は薄い
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