まつ毛エクステンションの施術に係る論点の整理(全文)
Posted on | 8月 12, 2012 | No Comments
2012年8月8日開催された平成24年度第3回生活衛生関係営業等衛生問題検討会で、事務局(厚生労働省健康局生活衛生課)はこれまでの検討を踏まえ「論点整理」を提示した。
なお、この「論点整理」は検討会で承認され、「論点整理」にそって、今後まつ毛エクステンションに関わる事業が行われる。
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「平成24年度 第3回 生活衛生関係営業等衛生問題検討会」開く
http://ribiyo-news.jp/?p=8118
・まつ毛エクステンションの教育プログラムを最優先で 厚労省が論点整理
論点整理の概要
http://ribiyo-news.jp/?p=8116
以下は「論点整理」
「まつ毛エクステンションの施術に係る論点の整理」(全文)
1. 検討に至った経過
・まつ毛エクステンションについては、これまで、国民生活センタ一等の受ける相談件数の増加や、消費者庁からの要請等を受けて、平成20年及び平成22年に、厚生労働省より通知を行い、当該行為が美容師法上に基づく美容に該当する等取扱について解釈を行ってきた。
・ しかしながら、現実には、美容師免許を取得せずに営業を行う者が多いこと、また、美容師が実施するとしても、単に美容師養成課程を修了しただけでは、まつ毛エクステンションについての専門教育を受けていないことから、施術を受ける者の安全性について確保ができない側面があり、今回の検討を行うに至っている。
・ また、こうした消費者における健康被害等の状況も受けて、平成23年12月には、消費者委員会から「まつ毛エクステンション等の施術について技術基準等を整備すること」 等について検討を行うべきことが建議されている。
2. 消費者に対する適切な情報提供
・検討会においては、消費者が適切な情報に接し、選択を行えるようにすることが第一に優先すべき課題とされた。まつ毛エクステンションは、目の周りへの施術であることから、目や皮膚に健康被害が生ずるおそれがあること、また、同健康被害は施術の仕方のみならず、消費者の体調等にも影響を受けること等について、消費者に理解が求められることが議論された。
・ 消費者に対し、施術による健康被害のリスクがあることについて、わかりやすく情報提供を行い、消費者が適切な自己決定を行いやすくするようにすることが求められる。
・ 昨今では、消費者は、インターネットやいわゆるフリーペーパーを通じた広告等で情報を入手し、サーピ、スや応舗の選択の意思決定を行っている。こうした広告等を掲載するサイト運営者やフリーペーパー編集者に本検討会の検討状況等が伝わることも求められる。
・施術所においては、サービスの内容や健康被害のリスクの明示がなされるとともに、施術者の資格・経験の明示、顧客の体調の確認(カウンセリング、アレルギーテスト等)、事故発生時の対応方針の説明と事故情報の開示、等が求められる。なお、健康被害の事故が発生した場合には、医師による受診の勧奨は当然のこととして、その後の経過について把握して、情報を蓄積することが求められる。
・なお、まつ毛エクステンションに係る健康被害の事故情報については、厚生労働省において、地方自治体の衛生部局と消費者担当部局との連携を図った上での情報収集と情報公開が必要と考えられる。
3. 安全な施術のあり方について
(1)美容師免許を有する者による施術について
・平成20年及び平成22年の厚生労働省の通知では、まつ毛エクステンションの実施者は美容師であるとされているが、一方で、美容師養成課程では、衛生面全般の教育はあるものの、まつ毛エクステンションを目的とした教育は乏しい。美容師免許を取得しただけでは安全な施術には不十分な状況にあると結論せざるを得ない。
・平成24年度に入学する美容師養成課程の教科書にまつ毛エクステンションに係る記述が加えられ、学生に安全な施術についての意識を持てるようにしたことは歓迎できる。
・その上で、美容師資格を取得した者がまつ毛エクステンションを安全に実施するための標準的あるいはモデル的な教育プログラムが厚生労働省も加わった中でとりまとめられれば、消費者にとっての安全、安心は向上する。
・上記のまつ毛エクステンションの教育プログラムの開発について、美容師養成施設、美容師、施術を行っている者、関係の医師会等が協力して行うことにより、実践的かつ安全性の高いプログラムとすることが出来ると同時に、関係者の聞での協力関係を深めるものとして有益と考えられる。
・こうした教育プログラムを美容師養成課程における選択科目に取り込んでいく、また、美容師が生涯学習の中で学べる仕組みとしていくことができれば、美容師が行う場合の安全性を向上させることができると考えられる。
(2)美容師免許を有しない者による施術について
・一方で、現実には、美容師免許を有しないで施術を行う者が多く、行政機関等からの指導や取締を受ける場合もあることについて、多くの議論がなされた。こうした者の中には、美容師養成課程に通学又は通信課程に学ぶ者もいれば、そうした養成課程には加わらず、美容師免許を有しない者をも受け入れるまつ毛エクステンションの先生やスクールでの指導を受けて、一定の技術を取得したとされる者も多いことがわかった。
・もともとは美容師免許を取得せずに施術を行いつつ、美容師養成課程に加わっている者については、現時点では美容師免許は未取得ながら、研修中の者として、美容師免許を有する者の指導の下で実習を行う者としての位置づけは可能と整理し、円滑な資格取得を進めることが考えられる。
・美容師養成課程に加わらず、まつ毛エクステンションに係る指導のみを受けてきた者についての扱いが問題として残る。
・消費者の安全を第一に優先して考える当検討会の立場からは、まつ毛エクステンションが目の周囲に係る施術で、あって、相当数の健康被害につながる危険性を考えると、全くの無資格者が施術を行う仕組みは不適切と考える。
・現状で、美容師免許を取得しないで、先生やスクールで、指導を受けたり、あるいは、施術者の団体等で履修したことを認定したりする仕組みがあるとされるが、検討会でヒアリングを行った限りでは、それらの教育は、容姿を美しく見せるための技術としてはともかく、医学面での知識を習得しているかは確認できず、消費者の安全性を確保するためのものとしては、不十分と判断せざるを得ない。
・特に、各施術者の団体からは、検討の当初の時期より、医学面での医師によるアドバイスを受けながら施術者の教育を行っている、また、施術者の実際の技術面でのアドバイスも医師から受けているとの説明がなされたが、その後、繰り返し、そうしたアドバイスをしている医師からの検討会における説明を求めてきたにもかかわらず、関係団体が10以上もあるとされる中、そうした医師の出席と説明が得られず今日に至っていることについては、遺憾であり、これら団体の説明の説得力は乏しい。
・団体側からの説明と対照的に、これらの施術者の団体を代表して実際に施術を行っている者からの説明の多くについては、術前の消費者への健康状態のチェック、器具等の取扱、事故時の対応と施術者間での事故情報の共有等について、慎重かつ安全な施術を行っているとの心証を与えるしっかりしたものであった。但し、施術をする立場から説明を行った施術者については、美容師免許を有する者であった。こうした参加者の説明は安全な施術を行っているとの印象を与えるものであったが、一方で、店舗間での技術、安全面での格差(サービスの質の差)があることも検討会の随所から窺われ、衛生的な取扱の不十分な店舗について取締が行われることは、消費者保護の上で当然のことと考えられる。
・なお、検討会として、説明を行った関係者に感じた違和感のひとつは、健康被害等の事故情報の記録と従事者間での共有についての意識が低いことが見受けられたことであった。現場でサービスを提供する立場の施術者や店舗に関係する者が検討会の場で説明することに慣れないことからの緊張もあることは割り引く必要があるが、営業店舗でこれまで、事故は無かった等の説明は、衛生問題の検討を行う立場からすると事実とは受け止めることはできず、むしろ、事故情報の取扱が適切にできていないと判断せざるを得ないことに注意を促したい。
・美容師免許を有しない者の取扱について、まつ毛エクステンションに限定した免許制度の創設を求める意見が施術を実施する者の団体から提出された。
・現状において、美容師は、美容に係る業務独占の資格として美容師法に規定されている。資格制度において、その一部に限定した資格を設けることは、議論としてはあり得るが、法律改正を必要とするもので、国民的合意が必要である。
・一方で法律としては美容師制度を設けている中で、まつ毛エクステンションに求められる教育プログラム自体が明確でないことから、まずは、安全にまつ毛エクステンションを実施する教育プログラムを関係者の協力でまとめることが適切と考えられる。まつ毛エクステンションに限定した免許制度の創設要望の意見については、そうした教育プログラムの作成を行いつつ、美容師法における美容師免許の位置づけ(いわゆる業務独占資格についての業権の問題等)との整理について十分議論を行って、検討されるべきものと考える。
4. 今後の検討の進め方
・本検討会では、昨年11月に本問題の検討を開始してから、多くの関係者からのヒアリングを行い、まつ毛エクステンションの施術を受ける消費者の安全の確保、施術を実施する者の現状と、施術者に求められる知識、技術のあり方、法規制のあり方と現実に施術を実施する者の位置づけ等について検討を行ってきた。
・今回、論点の整理を行ったが、これらのうち、消費者への安全な情報の提供のあり方と、安全にまつ毛エクステンションを実施する教育プログラムの開発を優先して検討することが求められる。
・現行法令のもとでは、まつ毛エクステンションについて美容師免許が必要であることはこれまで通知で明示されたところであるが、その指導監督等が行き渡っていないことも実態としてあり、一方で、無資格者であって美容師免許を取得しようとする者の円滑な資格取得を促すとともに、他方で、無資格者のうち特に衛生措置が不十分な施術者やその庖舗について重点的な指導監督が行われ、消費者の安全、安心が向上することが期待される。
平成24年度第3回生活衛生関係営業等衛生問題検討会(資料3、全文を掲載)
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