崩れる“開業＝サロン保有”　理美容室業界の構造転換の兆し

Posted on | 11月 22, 2025 | No Comments

株式会社Review（リビュー）は2025年11月21日、独自調査による2025年1月〜3月の理美容業の開業動向をまとめた「全国理美容開業ランキングレポート ver5」を発表した。

全国938件の開業データを分析し、美容所の開業が理容所の約14倍に達する“美容優位”の加速や、都市集中と地方での特化型サロンの増加、シェアサロン普及による独立形態の変化、SNS集客の定着など、業界の構造変化を多角的に示す内容となっている。

今回の調査期間で新たに開業した理美容店舗は938件で、前々年2,097件、前年1,869件から大きく減少した。統計上も異例の落ち込みだが、これは単純な開業減退ではなく「開業のかたち」が変化している兆しだと同社は分析する。都市部への開業集中は続く一方、地方では小規模・特化型サロンが増えつつあり、理容は成熟フェーズに入って新規参入が少ない状況だ。一方の美容では、SNSを起点とした集客とフリーランス化の進行によって、個人の発信力を軸にした開業が主流化しつつある。

都道府県別の開業件数では、東京都（127件）、大阪府（84件）、愛知県（76件）が上位を占めた。東京では「韓国風特化」「メンズ専門」「カラー特化」といった高感度サロンが増加し、InstagramやTikTokを使ったSNS集客が定着している。大阪は商業地でトレンド志向、住宅地は日常型サロンの増加など、地域ニーズに応じた出店が特徴だ。愛知・神奈川・埼玉などの郊外では、家族で通える日常型サロンが堅調で、居心地や信頼感といった体験価値が評価の軸となっている。

レポートはまた、次世代の理美容経営を左右する要素として「ブランド力×集客DX」「低リスク独立モデル」「体験価値の設計力」の3点を挙げる。SNSを活用したオンライン集客とデータ管理を前提にした経営、シェアサロンや面貸しの普及による低リスク独立、空間や接客を含む体験価値の設計が、今後のスタンダードになると見られる。

過去3年間の開業数は、2023年2,097件、2024年1,869件、2025年（1〜3月時点）938件と大きく減少している。この減少は、円安や不動産価格の高騰による投資抑制、フリーランス化やシェアサロンの普及による「開業届を伴わない独立」の増加、都市部と地方の二極化などが複合的に作用した結果とみている。店舗数だけでは業界の実像を捉えにくくなっていることを示す動きでもある。

理美容業界はいま、「どこで開業するか」より「どう働くか」「どんな価値を提供するか」が問われる時代に移行している。店舗を持たない独立、シェアサロンでの活動、雇用内キャリアとパラレルワークの選択肢が広がり、“開業＝サロン保有”という前提は崩れつつある。

開業件数の減少は業界の後退ではなく、新しい働き方と価値提供を基準とする時代の幕開けだと同レポートは指摘する。物価高や人材不足が続く中でも、自身の「個の力」を軸に挑戦を続ける理美容師を支える環境が整いつつあるという。

株式会社Reviewは、全国の店舗・施設・法人データを独自に収集・整備するデータプロバイダーであり、今回の調査も現場情報を反映した独自データに基づく。

全国の理美容開業ランキング　TOP10

1位：東京都（127件）

2位：大阪府（84件）

3位：愛知県（76件）

4位：神奈川県（64件）

5位：埼玉県（59件）

6位：福岡県（53件）

7位：兵庫県（47件）

8位：千葉県（39件）

9位：北海道（32件）

10位：静岡県（26件）

全国理美容開業ランキングレポートver5
https://re-view.jp/wp-content/uploads/marketingreport_beauty5.pdf

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