減少する理美容開業数、その裏で広がる“見えない独立”

Posted on | 8月 26, 2025 | No Comments

株式会社Review（リビュー）は2025年8月26日、同社が独自に収集した理美容開業データを分析し、「訪問美容」や「福祉美容」といった新しい開業スタイルが静かに広がりつつあるとするレポートを発表した。

レポートの題は「訪問美容の今　全国22,000件の開業件数から見えた『必要とされる場所』への変化」。

今回の分析は、2022年から2024年までの理美容開業データをもとに行われた。
調査によれば、全国の理美容室開業数は2022年の8,608件から2024年には6,093件へと、3年間で約2,500件減少した。一見すると業界の縮小に映るが、背後には「店舗を持たずに開業する」動きや「利用者のもとへ足を運ぶスタイル」の台頭があると同社は分析。

背景には超高齢社会の進展がある。総務省の統計によれば、2024年10月時点で65歳以上人口の割合は29.3％に達した。高齢者が3人に1人という社会では、理美容サービスも従来の「来店を待つ」形から「必要な場所に届ける」形へと変化している。すでに特別養護老人ホームや在宅介護の現場では、理美容師が利用者の自宅や施設を訪問して施術を行う「訪問美容」が定着している。

この動きを支えているのが制度と資格整備だ。厚生労働省は「介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン」で、訪問理美容サービスを地域の生活支援として実施できると明記している。一部自治体では訪問理美容に助成制度を導入し、在宅介護や施設入所者を対象にサービスを広げている。また業界団体も「福祉美容師」「介護美容師」などの資格制度を設け、ベッド上での施術技術や移動設備の活用、介護・医療との連携に対応できる人材を育成している。これらのスキルは単なる美容技術にとどまらず、生活を再構築する力として位置付けられている。

ただし訪問美容の広がりは公式な統計には表れにくい。美容所登録が不要とされるケースが多いためだ。美容師法第12条や厚労省の通達では、店舗を持たずに要介護者や入院患者に施術する場合、原則として美容所開設届は不要とされている（＊）。

さらに、シェアサロンに所属する美容師や業務委託契約で訪問サービスを行う美容師は「新規開業」と見なされないことも多い。税務上は開業していても美容所登録がなければ統計に反映されず、実態が見えにくいのが現状だ。

それでも地方や郊外では、外出が難しい高齢者や要支援者にとって訪問美容は生活インフラの一部となりつつある。店舗を構えずとも、誰かのもとを訪れ髪を整えることが、日常を取り戻す支えになっている。寝たきりの人が前髪を整えてもらった瞬間に笑顔を見せるように、サロンに行けない人に美しさを届ける理美容師の存在は、数字に表れないが確かに社会を変えている。

同社は、訪問や福祉を軸とする新しい開業スタイルは、単なるビジネスの変化ではなく、社会の変化に応える使命でもあるとしている。

（＊）厚労省生活衛生課は、訪問理美容を行う理美容師は、管理面などから理美容店に所属する理美容師を推奨する通知を発出している。

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