理美容室の倒産増加――構造転換期を迎えた業界
Posted on | 11月 12, 2025 | No Comments
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「理美容室の倒産」がテーマの一般メディアの記事が、この数か月でしばしば掲載されています。
記事の多くは経済担当の記者によるもので、「理美容室の倒産」の要因について、概ね次のように分析しています。
① コスト高:家賃、人件費、水道光熱費、理美容資材などの高騰。
② 低価格店の進出:低料金で営業するカット専門店やヘアカラー専門店が増え、コスト意識の高い消費者が流れた。
③ 人手不足:技術力や集客力のあるスタッフを引き留めるには待遇改善が必要だが、それが難しく離職が多い。
④ 個人による新規出店の増加:小型店の新規開業が増える一方で、シェアサロンを活用するフリーランス理美容師も増え、顧客獲得競争が激化している。
このほか、円安やインフレといった経済情勢、働き方改革などの社会的要因を挙げている記事もあります。分析の濃淡はあるものの、「人手不足」と「コスト高」を主な原因とする点は多くの記事に共通しています。

また、記者の視点は、民間の信用調査会社が公表する法的整理データを基にしており、理美容業界の中でも中規模以上の企業サロンを中心に論じている傾向があります。しかし実際には、企業サロンだけでなく、数人の従業員を雇用する地元の小規模理美容室でも、廃業や規模縮小が進んでいます。
当欄では、理美容室の倒産や廃業を、業界全体の構造が変化していく過程と捉えています。その背景には、理美容業界特有の事情と働き方改革の影響があると考えられます。
理美容業界は、技術者と顧客の「個人対個人」によるサービス業であり、他業種に比べて出店のハードルが低いこと、そして長年にわたり低賃金・長時間労働が常態化してきたことが特徴です。
働き方改革の影響で、他業種では賃金や労働条件の改善が進みました。かつては理美容業界の人材は業界内に留まる傾向がありましたが、近年は美容系サロンや異業種への転職が増え、人材の流動性が高まっています。そのため、従業員を雇用する理美容室では賃金改善が求められますが、その経費負担に耐えられない店舗も少なくありません。生産性の低い理美容室にとって、従業員の雇用維持は難しい状況です。
一方で、従業員側から見れば、理美容業界は出店資金や運転資金が比較的少額で済むため、独立しやすい環境にあります。ワンオペの理美容室なら完全予約制を導入しやすく、空いた時間を有効に使えるなど、柔軟な働き方にも対応できます。
今後の理美容業界は、おしゃれや癒しを重視するブランド企業サロン、低価格で気軽に利用できる専門チェーン店、そして従業員を雇用しない一人・夫婦営業の小型店やフリーランス事業が主流になると見られます。結果として、集客力の弱い企業サロンや地元の小規模店は縮小していく傾向が強まるでしょう。
いずれにしても、理美容室業界はいま確実に変革期を迎えています。そしてその変化は、業界全体の進化として前向きに捉えるべきものだといえます。
タグ: 業容変換, 理美教カフェ, 美容室倒産件数

























