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敏感肌に潜む“阻害菌”を発見 資生堂、微生物由来エキスで新アプローチ

Posted on | 8月 22, 2025 | No Comments


資生堂は、東京大学医科学研究所附属ヒトゲノム解析センターの井元清哉教授、植松智特任教授らとの共同研究において、敏感肌における新たな原因の一端を明らかにした。

研究グループは、敏感肌の人々には健康な肌に必要な「表皮ブドウ球菌」の生育を阻害する特殊なアクネ菌、いわゆる「阻害菌」が多く存在することを発見。この成果は、従来の解析手法よりも精密に皮膚常在菌の遺伝情報を調べられる「全ゲノムショットガン解析法」を用いたことにより可能となった。
敏感肌に潜む“阻害菌”を発見
また同研究では、阻害菌を選択的に抑制し、表皮ブドウ球菌が育ちやすい環境を整える「微生物由来エキス」を見出している。資生堂は今後、この知見を活かし、新しいスキンケアソリューションの実現を目指す考えだ。研究成果の一部は2024年8月の日本細菌学会総会で発表されている。

半世紀以上続く敏感肌研究の延長線

資生堂は50年以上にわたり敏感肌の研究を続けてきた。これまで同社は、肌そのものの構造や機能だけでなく、心身の状態やその相互作用にも注目し、敏感肌のメカニズム解明に取り組んできた。近年は「皮膚常在菌叢」に焦点を当て、その多様性やバランスが敏感肌に大きな影響を与えていることを明らかにしている。

特に注目されるのは、皮膚常在菌の中でも大きな割合を占める「アクネ菌」と「表皮ブドウ球菌」の関係だ。資生堂の過去の研究では、敏感肌ではこの二種の菌の比率が健常肌と比べてアンバランスであり、表皮ブドウ球菌が相対的に少ないことが分かっていた。表皮ブドウ球菌は肌にとって有益な役割を担っているため、この減少が敏感肌の一因である可能性が指摘されていた。同社はその改善策として、表皮ブドウ球菌を増やす「プレバイオティクス成分」を開発してきたが、今回はさらに一歩踏み込み、アンバランスの“原因”そのものに迫った。

阻害菌の存在を突き止める

今回初めて採用された「全ゲノムショットガン解析法」は、皮膚に存在する常在菌叢すべての遺伝子配列を高精度で解析する方法だ。この技術により、敏感肌の人々の皮膚常在菌叢には、表皮ブドウ球菌を抑制する「抗菌ペプチド」を作る遺伝子の割合が多いことが判明した。
敏感肌に潜む“阻害菌”を発見
敏感肌に潜む“阻害菌”を発見
さらに詳細な解析の結果、こうした遺伝子を保有しているのはアクネ菌の一部に限定されており、研究グループはこれを「阻害菌」と定義した。阻害菌と、それを持たない通常のアクネ菌(非阻害菌)を比較したところ、阻害菌は表皮ブドウ球菌の生育を強く抑えることが確認された。つまり、敏感肌では阻害菌の存在が表皮ブドウ球菌の減少を引き起こし、その結果、菌叢のバランスが崩れている可能性が示されたのである。

新成分「微生物由来エキス」の発見

資生堂はこの知見を踏まえ、阻害菌だけを選択的に抑制する成分を探索した。その結果、過酷な環境に生息する微生物から得られる「発酵エキス」に阻害菌を抑える効果を見出した。この「微生物由来エキス」は、阻害菌を抑制しながらも、肌に必要な通常のアクネ菌や表皮ブドウ球菌の生育には悪影響を与えないことが実証されている。
敏感肌に潜む“阻害菌”を発見
さらに、このエキスは既に資生堂が開発している「プレバイオティクス成分」の働きとも干渉せず、両者を組み合わせることで、表皮ブドウ球菌の増加と阻害菌の抑制という二方向から常在菌叢の健全化が期待できるとされる。結果として、敏感肌の改善に向けた新たなアプローチが確立されたことになる。

今後の展望と意義

今回の発見は、敏感肌の原因解明と改善策の両面で大きな一歩といえる。従来の研究では、菌叢のアンバランスという「現象」には注目されていたが、その「原因」までは明らかにされていなかった。阻害菌の特定と、それを抑える有効成分の発見は、敏感肌ケアの研究における新たなブレークスルーと位置づけられる。

資生堂は今後、この研究成果をスキンケア製品に応用し、敏感肌の人々に向けた新しいソリューションの提供を目指す考えだ。皮膚常在菌叢の健全化を軸に据えたスキンケアは、従来の保湿や保護といった機能にとどまらず、肌の根本的なコンディションを整えるものとして期待される。

また、本研究は「肌の状態は菌叢のバランスに大きく左右される」という認識をさらに強める結果となった。近年、腸内フローラの研究が健康や美容分野で注目されているが、皮膚におけるマイクロバイオームの解明も同様に重要である。資生堂は今後もこの分野の研究を深化させ、肌の健やかさと生活者の安心に貢献していく方針だ。

敏感肌は世界的にも多くの人々が悩む課題であり、精神的なストレスとも結びつく問題でもある。資生堂が長年にわたる研究の中で築いた知見と、今回得られた新成分の発見は、敏感肌ケアの未来に大きな可能性を拓くものだといえる。

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タグ: 敏感肌, 美容サイエンス, 資生堂

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