フェイシャルエステが脳を癒す 脳の活性化とストレス軽減に効果
Posted on | 5月 22, 2025 | No Comments
フェイシャルエステには美容的な効果だけでなく、心理的な効果があるといわれてきたが、科学的に心理的効果が実証された。
日本メナード化粧品株式会社は、名古屋大学 脳とこころの研究センターと共同で、フェイシャルエステが脳活動に与える影響についての研究を実施し、脳の特定領域を活性化することで心地よさやストレス軽減に寄与していることを明らかにした。本研究は、2025年3月7日〜8日に開催された第27回日本ヒト脳マッピング学会で発表された。
フェイシャルエステには美容的な側面だけでなく、心を落ち着かせるなどの心理的効果があるとされてきた。メナードではこれまでもフェイシャルエステの心理的影響に関する研究を行ってきたが、今回はより科学的にその実態を検証するため、名古屋大学との共同研究という形で、脳活動に焦点を当てた解析を行った。
実験には、平均年齢35歳の健常な女性23名が参加した。被験者に対して、エステセラピストが顔からデコルテにかけたフェイシャルエステを施術。施術前後に心理評価アンケート、唾液採取、fMRIによる脳活動の測定が行われた。fMRI画像は、名古屋大学 脳とこころの研究センターに設置されたSiemens社製Verio(3T MRI装置)を用いて取得された。
心理評価の結果、フェイシャルエステ施術後には「心地よさ」「幸福感」「リラックス」などポジティブな感情が有意に増加し、「ストレス」「疲労感」などネガティブな感情は減少した。唾液成分の分析では、幸福感や親密感に関係するホルモン「オキシトシン」が増加し、ストレス指標である「コルチゾール」が低下する傾向が見られた。これは生理学的にも心理的にもリラクゼーション効果が得られていることを示している。
<フェイシャルエステによる心理状態の変化>
さらに注目すべきは、fMRIによる脳活動の変化だ。フェイシャルエステ施術後には、脳の海馬と島皮質、海馬と吻側前頭皮質の間で脳機能的結合が強化されていることが確認された。脳機能的結合とは、異なる脳領域が情報をやり取りする際の連動性を示すもので、今回の研究ではCONNと呼ばれる解析ソフトウェアを用いてその連動性を詳細に解析した。
<唾液中タンパク質の測定結果>
海馬は記憶の形成や空間認知に関わる領域であり、島皮質は身体感覚や情動の処理に関与する。吻側前頭皮質は、感情制御や社会的認知にも関連する領域とされている。これらの脳領域の活動が活性化し、互いの結合性が強まったことは、フェイシャルエステが単なる肌表面のケアではなく、脳機能にもポジティブな影響を与えている可能性を示唆している。
<海馬と島皮質の脳機能的結合の高さと、心地よさとストレス軽減との関連>
さらに、唾液中のホルモン量と脳機能的結合の関係性についても興味深い結果が得られた。オキシトシン濃度が高いほど、海馬と島皮質間の脳結合が強まり、逆にコルチゾール濃度が高いとその結合は弱まる傾向が示された。このことから、フェイシャルエステによる「癒し」の効果が、ホルモン分泌と脳神経ネットワークの変化を通じて実現されていることが伺える。
メナードは今後、今回の研究成果を応用し、より心地よさを追求したフェイシャルエステの開発や施術方法の改良を進めていく予定だ。また、こうした科学的根拠に基づいた美容サービスの価値を高めることで、心身ともに満たされる体験を多くの人に届けたいとしている。
今回の研究は、美容の枠を超えて「脳科学」と「感性」を融合させた取り組みであり、今後の美容業界における新たな価値創出につながる重要な一歩と位置づけられる。美容が単に外見を整える行為ではなく、心の健康にも寄与し得るという視点が広がることで、業界全体のサービス価値向上にもつながっていくと期待される。
タグ: フェイシャルエステ, フェイシャルエステの心理的効果, 美容サイエンス