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日本伝統の刺青と世界のタトゥー文化

Posted on | 8月 30, 2024 | No Comments

理美容ラウンジ訪日外国人を見ても、先日終えたパリオリンピックの選手らを見てもタトゥーをしている若者は男女を問わず多い。タトゥー文化は世界的な潮流のようです。

彫師によるタトゥー施術が医師法違反にあたるかで争われていたタトゥー裁判が2020年の最高裁判決で無罪が確定してから、徐々にタトゥーをする日本の若者も増えているようですが、外国人、とくに欧米人と比べると少ない。
日本人は長い歴史のなかでタトゥーに対する忌避意識があるのかもしれません。

1~2世紀ごろの日本を記述した『後漢書』倭人伝によると、「男子皆黥面文身、その文の左右大小をもって、尊卑の差を別つ」(意訳、以下同)とあります。文は刺青、黥面は顔に描いた刺青のこと。当時の男子は顔に刺青をしていて、刺青の左右大小、図柄によって身分をあらわした、と伝えています。

顔に文様の描いた埴輪が出土していることから、『後漢書』の記述を信頼する説もありますが、『後漢書』倭人伝については伝聞が多く、この記述が正確に当時の日本を伝えているとは限りません。

『日本書紀』景行紀(4世紀前半ごろの第12代天皇)に、日高見国の男女は文(刺青)をしている、とあります。日高見国はいまの常陸の国で、当時は蝦夷の人が支配していたらしい。

『日本書紀』斉明紀(7世紀中ごろ、第37代天皇/=皇極天皇、重祚)に、陸道奥蝦夷男女二人(奥州の蝦夷の男女二人)が文身をしていた、とあります。

同じく『日本書紀』履中紀(5世紀前半ごろ、第17代天皇)に、「死をゆるして墨に科し、黥む」とあります。本来なら死刑にするところを免じて目の周囲に刺青をした。「黥む」は、めさききざむ。後年の墨刑に通じます。
『古事記』には、「大久米命の黥ける利目」などの記述があり、これも墨刑のようです。

『日本書紀』景行紀、斉明紀は蝦夷についての記述です。倭人は5世紀ごろには刑罰の一つとして刺青が行われていたようです。

刑罰としての刺青ついては、起源からその後の経緯について諸説あることを『嬉遊笑覧』(喜多村信節)が紹介しています。

時代は下って近世の江戸時代になると、盛んに刺青が行われるようになります。
喜多川守貞さんは『近世風俗志』で江戸時代後期の刺青について、次のように記述しています。
「江戸、京、大坂の三都では身分の低い卑賎の男子が刺青をしてます。とりわけ江戸は盛んで、鳶、駕籠かき、工夫ら多くがしていて、鳶の者で刺青をしていない者は少ない。」
「昔の刺青は素人がお互いに入れていたのでお粗末でしたが、いまは専門の彫師がいて、その技は熟練し精美に仕上げます。」
その絵柄についてもいろいろな具体例を紹介しています。
「第11代将軍・家斉公(在位1787-1837)は望んで、鳶人足の彫り物を見物したことも紹介されています。
18世紀には刺青を仕事にする彫師が活躍して、意匠を凝らした刺青をしていたのがうかがえます。

江戸時代は、自己表現としての刺青が行われる一方、罪人に対しても二の腕に刺青が施されていました。罪人はその刺青を隠すために彫り物をした、という説もあります。

『近世風俗志』は、刺青についての江戸と上方との違いを記述しています。江戸後期に江戸と上方を頻繁に往来していた喜多川守貞さんが見聞した記述です。

刺青の名称は、上方は「いれぼくろ」、江戸は「ほりもの」と呼んだといいます。墨刑を指す「いれずみ」が避けられ、別称で呼ばれたと喜多川守貞さんは解説しています。
江戸は刺青をしてる男が多く、銭湯で彫物をしている者がいても回りの人は気にしなかったが、上方は刺青者がいれば「衆人避けて近寄らず」の状態だったそうです。

江戸では鳶、車力、工夫、小商人、職人らがしていて、刺青者はよく見かける存在でした。刺青者は隣人でした。男に限らざう六法肌の女も刺青をしていたようです。上方では任侠者や犯罪歴のある者ら少数で、避ける存在だったのが喜多川守貞さんの記述からわかります。

戦後になると、社会は東京・大阪を問わず、刺青者を避けるようになります。
銭湯や大型浴場施設で、刺青のある人の入湯を断る貼り紙をよく見かけました。
おそらく、江戸時代が終わり近代になると、刺青をする人は任侠、博徒、テキヤの一部になり、彼らが示威的な意味合いから刺青をするようになったのではと推測されます。彫師の存在も大きい。

一般の人は、刺青をしません。刺青をする人はごく一部の反社会的な人と見られていました。日本人が刺青を忌避するのは、墨刑、反社的なイメージ、また親からもらった身体は大切にするものといった儒教的な思想が根強く残っていたからと想像できます。儒教的な思想は日本だけでなく韓国、中国の東アジアで根強く残っているようで、この地域ではタトゥーは欧米ほど多くはないようです。

状況が変わったのは、外国人観光客が大挙して押し寄せるようになった平成の時代からです。令和のいま、タトゥーをしている人の入湯を拒む入浴施設はないと思われます。
図柄は以前は倶利伽羅紋々の和彫りが大半でした。しかし、タトゥーは自己表現の一つの手段として豊富なデザインが用意されてます。客の要望に応じて彫る例も多い。日本の伝統的な和彫もありますが、多彩なデザインがあり、文字彫もありますし、ワンポイント的なデザインもあります。

美容の領域は時代とともに変わります。これからはタトゥーも自己表現の一つの美容手段として、国内でも普及していくものと予想されます。10年後、20年後、日本でもタトゥーが普通に行われるようになっているかもしれません。

ちなみに2020年の最高裁判決で、草野耕一裁判長は「補足意見」として、「タトゥーの施術による保健衛生上の危険を防ぐため法律の規制を加えるのであれば、新たな立法によって行うべきだ」としていましたが、いまのところ保健衛生上の危険はなく、タトゥーに対する新たな規制の動きはないようです。

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タグ: タトゥー, 刺青, 理美容ラウンジ

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