皮膚老化因子は、トロンボスポンジン-1(THBS1)
Posted on | 5月 10, 2024 | No Comments
ロート製薬は、大阪大学蛋白質研究所との共同研究で、皮膚老化に対し効果的な因子がトロンボスポンジン-1(THBS1)※1であることが判明した、と2024年5月9日発表した。
皮膚の老化は、紫外線などの外的要因と加齢による内的要因が複合的に関与していることが知られている。
内的要因としては、加齢に伴って皮膚組織に蓄積される老化細胞が関与していることが明らかにされているが、その発生メカニズムはまだシステムレベルで解明されていない。
同研究では、大規模でかつ高速にDNAやRNAの配列情報を読み取ることができる次世代シーケンサーを用いた様々なオミクス解析を行い、皮膚老化を誘導する上流因子を探索し、これらの実験結果に基づいた皮膚老化数理モデルの構築とシミュレーション解析を行ない、皮膚老化に対し効果的な因子として、トロンボスポンジン-1を突き止めた、という。
<研究成果のポイント>
・次世代シーケンスデータから老化皮膚においてトランスフォーミンググロースファクターベータ1(TGF-β1)※2シグナルが増加することを発見
トロンボスポンジン-1(THBS1)※1とフィブロモジュリン(FMOD)※3が皮膚老化の重要な因子となることを確認
皮膚老化により活性化するTGF-β1がTHBS1を増加させ、FMODを減少させることを確認
数理モデルのシミュレーション解析により、皮膚老化のターゲットはTHBS1であることが判明
<用語解説>
※1:トロンボスポンジン-1(THBS1)
細胞外マトリックスに存在するタンパク質であり、細胞増殖を制御するサイトカインの1つであるTGF-β1の活性化を担います。TGF-β1は活性をもたない潜在型として産生され、活性化を受けてその作用を発揮することができます。
※2:TGF-β1(トランスフォーミンググロースファクターベータ1)
細胞の成長や分化、細胞間相互作用に関与するサイトカインであり、免疫応答、炎症、組織再生、細胞の増殖、分化などの幅広い生理的プロセスを制御します。活性化されたTGF-β1は、細胞表面の受容体に結合し、シグナル伝達を介して下流転写因子であるSMAD2/3を活性化(リン酸化)することで様々遺伝子発現を制御することが知られています。
※3:フィブロモジュリン(FMOD)
細胞外マトリックスに存在するタンパク質であり、コラーゲンの線維形成と架橋に影響することが報告されています。FMODはTGF-β1と結合することにより、TGF-βシグナルの活性化を阻害することが報告されています。
研究成果の詳細は同社「研究開発リリース」
https://www.rohto.co.jp/research/researchnews/technologyrelease/2024/0509_01/
タグ: ロート製薬, 皮膚老化, 美容サイエンス