コロナ禍で強まったセルフ志向
Posted on | 4月 18, 2024 | No Comments
理美容室の競争相手は、近隣の競合店ばかりではありません。「鳥の目」に例えられるマクロ的に見れば、個々人、あるいは家族らによるセルフ施術が最強の競争相手です。
年1回以上、理美容室を利用する人の割合を利用率とします。男性の利用率は9割強、女性は85%ほどになります。美容系サロンでもエステティックやネイル、アイビューティなどは客単価は高いのですが、市場規模が理美容室より小さいのは、この利用率が大きく影響しています。
新型コロナウイルス感染症の流行で、人との接触を避けた結果、客の来店間隔は長期化し、理美容を含め美容系サロンの売上は大きく落ち込みました。その一方で、セルフ施術で済ます人が増えました。理美容サービスへの支出が減った反面、美容家電など美容用品への支出は増えています。
瘦身や脱毛、美肌などに効果が期待される美容家電や、ヘアカールアイロンやストレートアイロン、美髪効果が期待できるヘアドライヤーなどは好調だったようです。家庭用散髪道具に至っては世界的に売れました。
コロナが第五類に移行し、普段の日常が戻ったいま、多くの産業はコロナ禍前の売上に戻りましたが、美容系のサービスは回復が遅れています。その理由の一つが、コロナ禍を経てセルフ志向が強まったことがあるのでは、と推測します。
セルフ志向は女性に強く、男性客が多い理容室やメンズ美容室はほぼコロナ禍前に戻りましたが、女性客が多い美容室やエステティックサロンは回復が遅い。2023年度のエステティックサロン倒産件数(負債額1000万円以上)が過去20年で最多だった理由の一つにセルフ志向が指摘されてます。(*)
経営規模の小さい美容室業界は倒産件数は目立たたないものの、廃業や閉店する店舗が増えていることが懸念されます。廃業しないまでも副業、兼業をしたり、またフリーランスで働く人も増えています。
理美容室をはじめ美容系サロンの最強の競合相手はセルフ施術です。セルフ施術が拡大する背景には経済状況もありますが、美容機器の開発、美容用剤の進歩があります。今回は、そこにコロナ禍による人的接触の回避が影響した可能性が高い。
(*)コロナ禍で男性客(女性客も)は技術者との接触時間が短くて済むカット専門店やカラー専門店を利用する人が増えました。デフレ経済下でのカット専門店・カラー専門店利用の流れをコロナ禍がおし進めました、といえます。
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