美や感性に関連する脳機能の研究
Posted on | 4月 7, 2024 | No Comments
美や感性に関連する脳機能が、「神経美学」と8K映像技術を組合わせた研究が専門学会で優秀賞を獲得した。
「神経美学」研究と8K映像技術を融合し、「魅力認知」の解明に向けた研究を進めているポーラ化成工業(ポーラ・オルビスグループ)は、昨年開催された第25回日本感性工学会大会で優秀発表賞を受賞した、と2024年4月3日発表した。
神経美学とは、認知神経科学の新しい分野で、美的体験(美、感動、崇拝など)の認知プロセスを脳計測や心理実験といったアプローチで研究する学問。高密度脳波計測などと高精細な8k画像で解析し、深層学習法や統計分析法などで客観的にアプローチする手法で研究した。
同社は「プロダクトやサービスへの展開を見据えたさらなる研究に取り組んでいます」としている。
魅力認知について神経美学研究を推進
神経美学とは、認知神経科学の新しい分野であり、美的体験(美、感動、崇拝など)の認知プロセスを脳計測や心理実験といったアプローチで研究する学問です。美しいものを見たときの脳機能や、どういったものを美しいと感じるのか、といった感性についての研究は、プロダクトやサービスの感性価値の理解、向上に繋がります。ポーラ化成工業は、慶應義塾大学 川畑秀明教授と共同で、ヒトの魅力認知について神経美学研究を推進しています。
神経美学研究手法に8K映像技術を組み合わせることで、従来難しかった「ありのまま」の認知メカニズム解明へ
顔の認知研究では、ディスプレイ上に表示した顔画像を被験者が観察する手法を用います。しかし、従来の研究で用いてきたディスプレイと顔画像の解像度の組み合わせでは、ヒトの眼の解像度の1/10程度にとどまり、実際の視環境とは大きく乖離していることが課題でした。
顔の魅力を感じる認知機構をありのまま深く理解するためには、日常生活で接する「ありのままの顔」を、実験上の視環境でも再現することが必要です。そこで着目したのが8K映像技術です。8Kで撮影した画像および8Kディスプレイを用いた視環境は、ヒトの眼の分解能と同等の高い解像度を持つため、実物に近いありのままの顔を映し出すことが可能です。
この8K映像技術を用いて構築した視環境と神経美学研究を組み合わせることで、従来の研究では捉えることのできなかった「魅力を感じる認知メカニズムの解明」に繋がると考えられます(図)。
成果を各種学会にて発表。日本感性工学会大会で優秀発表賞を受賞
神経美学研究と8K映像技術を組み合わせた研究からは、新しいことが続々と解明され始めています。研究成果の一部は既に学会で発表し、うち一演題が感性工学会大会 優秀発表賞を受賞しました。
今後、本研究を発展させ、これまでの研究手法では明らかにできなかった魅力の認知に関連している脳機能や、魅力認知に関わる顔・肌特徴の解明を行っていきます。その研究成果を応用することで、自分自身をより魅力的に見せる新たなアプローチの開拓や、日常生活で出会うものに魅力をより感じやすくなりウェルビーイングを導くような新たなプロダクトやサービスの開発が期待されます。
【補足資料1】 解像度について
解像度とは、画像やディスプレイを表現する格子の細かさを示す尺度で、一般的にディスプレイ上に表示された画像ではピクセル数によって表現されます。中でも、8K画像は非常に高い解像度で、通常、7,680×4,320ピクセル(29インチディスプレイで換算すると304 ppi(※1))で提供されます。
この高解像度によりディテールまで精細かつ鮮明な映像が実現され、映画、テレビ、ゲーム、デザイン、医療画像などの分野で重要な役割を果たしています。また、網膜の解像度は、300 ppiであることが知られており、8K画像は生物学的解像度に匹敵する高いピクセル密度を持つため、人間の網膜による知覚能力に近い鮮明な画像を提供できます。このような高解像度は、視覚的な現実感を向上させ、多岐にわたる応用分野で卓越した視覚体験をもたらすとされています。
タグ: ポーラ, 美容サイエンス