ケラチンマイクロ球体ゲルに発毛効果
Posted on | 3月 21, 2024 | No Comments
筑波大学は、毛髪の主成分であるケラチンをマイクロ球体化し、水中に分散させた「ケラチンマイクロ球体ゲル」が、毛包の成長促進に効果があることをマウスを用いた実験により実証した、と2024年2月発表した。
副作用がほとんどない発毛・育毛剤の有効成分としての応用が期待できるとし、ミノキシジルに代わる育毛剤、また女性用の育毛剤として開発をすすめる。
研究代表者は、礒田博子筑波大学生命環境系教授、山本洋平筑波大学数理物質系教授。
MED R&D株式会社、マイキューティック株式会社との共同研究。
掲載論文
【題名】 Keratin Microspheres as Promising Tool for Targeting Follicular Growth(毛包の成長を標的にするための有望なツールとしてのケラチンマイクロ球体)
【掲載誌】 ACS Applied Bio Materials
【DOI】 10.1021/acsabm.3c00956
皮膚には、粒子の浸潤や外因性の攻撃を制限するバリア機能があります。
最近の研究では、発毛関連物質を小さな粒子にすることで、皮膚バリアを通過して、毛根を包んでいる毛包に送達できることが示されています。
本研究では、マウスを用いて、水溶性の酸化ケラチンから成るマイクロ球体ゲル(ケラチンマイクロ球体ゲル)を皮膚に塗布することで、毛根内にある毛乳頭細胞における細胞増殖と発毛関連遺伝子の発現が有意に増大し、発毛・育毛が促進されることを実証しました。
剃毛したマウスの背中にケラチンマイクロ球体ゲルの水分散液を塗布したところ、塗布後2日目から発毛が見られ、それ以降も速いペースで育毛が観測されました。これは、発毛の有効成分として知られるミノキシジルを塗布した場合と同等の効果でした。
また、マウスの背面皮膚組織の遺伝子解析を行った結果、毛周期調節や皮膚恒常性維持に関連する遺伝子の発現が有意に増大していることが確認されました。
さらに、ヒト由来の培養表皮モデルを上側、ヒト初代毛乳頭細胞を下側で共培養した皮膚モデルを構築し、ケラチンマイクロ球体のゲル皮膚透過性を介した毛乳頭細胞の活性化作用を、遺伝子発現解析により確認しました。
今回の成果は、ケラチンマイクロ球体ゲルの発毛・育毛効果を実証した初めての例です。ケラチンは毛髪や皮膚の主成分であることから、副作用がほとんどない発毛・育毛成分としての応用が期待できます。
マウスによる実証結果。
水(最上)との比較。ケラチンマイクロ球体ゲル(最下)を塗ったマウスは1%ミノキシジル(上から2番目)を塗ったマウスと塗布10日目で、ほぼ同等の成長促進効果が確認できる(筑波大学のニュースリリースより)
タグ: 発毛剤, 発毛研究, 美容サイエンス