通知は軽い、されど効力はある
Posted on | 6月 29, 2023 | No Comments
非営利の社会貢献活動として、障害者や高齢者、がん患者らを対象に美容所以外で、メークアップセミナーを開いても美容師法違反にはならない。
資生堂の照会(2022年10月日)に対する厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生課の回答(同年11月4日)。
回答は「無料又は参加者から実費相当を徴収して、メーキャップセミナーを開催し、参加者の一部(自分でメーキャップを行うことが困難な方)に化粧を行うものであれば、社会通念上、美容師法における美容を業とするものとは解されないと考えます」。
厚生労働省は、出張美容や福祉美容など認められた場所以外での美容施術に関して、これまでにも同様の判断をしています。
美容師法違反になるか否かの判断のポイントは3点あるようです。
一つ目は、無料であること(業ではないこと)。
営業で行う美容施術は美容所に限られます。美容師法は煎じ詰めれば美容師に関する規定と美容所に関する規定といえます。
二つ目は、特定の人に限ること。
無料で行っても不特定多数の人に行う美容施術は美容師法違反になります。以前、某アミューズメント施設が来場者に無料で行う仮装メークに対して美容師法違反が指摘されたことがありました。
三つ目は、社会通念です。
厳密にいえば、いまの社会通念です。社会通念は時代とともに変化するのでやっかいです。
社会通念の変化で廃止になった通知が過去にあります。
理容師が行うパーマと美容師が行うカットを客の性別で規定した局長通知(昭和53年)がありましたが、ジェンダレスが当たり前になった平成27年に廃止されています。理由は「社会風俗の変化」でした。もっとも平成10年代には風俗やファッションではジェンダレスが当たり前になっていて、男性客をカットする美容室は普通にありました。「社会風俗」の変化、「社会通念」の変化にだいぶ遅れての廃止の通知でした。
以下は余談です。
資生堂の照会に対する回答は、事務連絡ですが、事務連絡も課長通知も局長通知も法律ではないので、行政の一存で改廃されるてしまうことがあるのは過去の事例が示すところです。国会で承認された法律、政省令、また地方議会で承認された条例に比べるまでもなく通知は軽い。されど通知には法律に準じた効力があります。
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