行政の「通知」を考える
Posted on | 12月 16, 2019 | No Comments
理容業と美容業の違いは、男女別によりカットとコールドパーマの業務範囲を規制した昭和53年通知が平成27年に廃止され、実質的に同一となった。
あえて違いをいうのなら、まつげエクステンションは美容師はできるが理容師はできない(平成20年通知)、シェービングは理容師はできるが美容師は本格的な顔剃りはできないが化粧に付随する程度ならできる(昭和23年通知)、ということぐらいだ。
53年の理容と美容の業務範囲を規定した通知をはじめ、マツエク、化粧に付随する顔剃りも通知である。通知とはそもそも何なのか考えてみたい。
通知、通達ともいう。
通知は行政手続法に準拠している。上級機関が下級機関を統制するために発出されるもので、おもに法の解釈基準や運用基準を示す。
私人に対して発せられたものではないので、通知は私人に対しての法的な拘束力は持たない。通知に違反した場合は、いきなり罰せられることないが、行政指導、さらには命令、処分などが行われる。
行政指導とは、行政機関による「指導、勧告、助言」である(行政手続法第二条六)。同法では「行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない」(行政手続法第三十二条2)とも定めており、行政指導は行政機関からのお願いと理解できる。
行政指導を何度も行ったが改善されない場合はどうなるのか? 命令、処分が行われるが、これはケースバイケースで一概には言えない。
個別事案ごとに他の自治体の対応状況や、場合によっては国と相談して判断することが多い。通知そのものが、そもそもお願いなので、通知に違反したとしても、事業者に対して不利益処分を発するのは慎重にならざるをえない。
昭和53年通知後、この通知に反する営業をしていた理容店、美容店は少なくなかったが、実際に行政指導されたケースは、2件(与論島、高知県)ぐらいしかない。
ちなみに不利益処分の内容は、理容師法・美容師法関連の場合は、両法に準拠し、最大でも、30万円以下の罰金、業務停止処分、閉鎖命令等の適用にとどまる。
上表で、現在の理容師と美容師の業務範囲の違いをまとめた。
仮定の話として、もし美容師が本格的な顔剃りを行った場合は、行政指導の次には理容師法に基づく不利益処分が行わる可能性がある。一方理容師がまつ毛エクステンションを行った場合、次には平成20年通知違反として、美容師法に準拠する不利益処分が行わる可能性がある。しかし、業法による処分と、業法を準用する処分とではその内容、程度は自ずと違ってくる可能性がある。
近年、地方自治体によっては地域活性化策として様々な事業を行っているが、ときとして通知が事業遂行の障害になることがある。そんなとき、自治体によっては通知を否定する条例を制定して突破することもある。国会の承認を経た法律、政省令とは違い、通知は所詮、行政手続きにすぎない。民意を得てている条例にはかなわない可能性もある。
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