かもじの話
Posted on | 4月 18, 2022 | No Comments
和髪はかもじを利用することが多いですが、かもじという言葉は、もともとは宮中の女房詞で、髪の「か」と接尾語の「もじ」から構成されています。
宮中の女房の髪型は平安時代から床まで届く長い大垂髪(おすべらかし)が定番でしたが、室町時代になると、普段の日常生活では短い髪で過ごすようになりました。経済基盤の荘園を失ない、女官も働らかざるをえなくなり、長い大垂髪は邪魔になったからです。そして宮中の行事があるときは、かもじを継ぎ足して長くして、容相を整えました。
かもじの「もじ」は接尾語ですが、接尾語には、男らしいの「らしい」や春めくの「めく」などがあります。単独では意味をなさず、前に他の言葉につけて、はじめて成立する、語彙構成要素の一つ、と辞典にあります。
かもじの「もじ」は文字に通じ、「か」に髪を略した意味合いがあります。同様の言葉にゆもじがあり、「ゆ」は浴衣を略しています。おはもじという言葉もあります。これはお恥ずかしい、です。婉曲的な表現といえます。接尾語「もじ」がつく言葉は令和のいまはあまり使われておらず、ほぼ死語のようです。
かもじの「か」が髪を表すのなら、もっと古くからあってもいいのですが、この「か」には髪は髪でも、つけ髪のことを指し、室町時代に誕生した言葉といわれています。
誕生した当時は、毛束状のつけ髪をさしていたかもじですが、日本髪や束髪の和髪では鬢、髷、タボ(ツト)などを構成するための補填材も、かもじとよぶようになります。あんこうともいいます。あんこうは、饅頭のあんこうからきています。ぞうもつとよぶ女髪結さんもいましたが、ちょっと露骨すぎます。
あんこう、ぞうもつも毛が材料です。室町時代のかもじも素材は毛です。いまでは毛髪素材の頭髪装飾のための補助用品を総称して、かもじとよんでいます。
タグ: かもじ, 大垂髪, 髪にまつわるエトセトラ