薄毛治療に画期的な治療法の可能性
Posted on | 12月 4, 2018 | No Comments
現在、男性の薄毛治療で使用されているミノキシジルやフィナステリドは効果はあるものの人によっては副作用(*)が出る。そんな薄毛治療を根本を変える可能性のある発毛のメカニズムに関する研究が『Nature Communications』(2018年11月21日)に発表された。将来は副作用のない薄毛治療や男性型薄毛だけでなく加齢による薄毛の改善も可能という。
米国・ニューヨーク大学医学部のイトウ・マユミ博らの研究グループが発表した。
発表はマウスによる臨床実験。
研究チームが着目したのは、マウスの傷を受けた皮膚にある繊維芽細胞とヘッジホッグシグナル伝達経路の関係。
繊維芽細胞は、皮膚や髪の形や強さを維持するうえで大切なタンパク質であるコラーゲンを分泌。さらに傷を治癒するプロセスを助けるが、それによってコラーゲンが溜まった皮膚では、髪の再生が滞ってしまう、という。
一方、ヘッジホッグシグナル伝達経路は、細胞同士がコミュニケーションを図るために使われる経路で、毛包が形成される子宮内の胎児では非常に活発なことが知られているが、加齢で細胞が成熟したり、皮膚を傷つけたりすると活動が低下してしまう。
そこで研究チームは、マウスでヘッジホッグシグナル伝達経路を活性化させ、マウスの細胞間のコミュニケーションを刺激すると、4週以内に毛が再生し、さらに9週後には、毛根と毛幹が現れはじめた、という。
一方で、ヘッジホッグシグナル伝達経路への刺激は、腫瘍が生じるリスクが高まることが知られているが、研究チームはこのリスクを避けるために、皮膚乳頭といわれる毛包の根っこが最初に現れた皮膚表面の真下にある繊維芽細胞だけを刺激することで、腫瘍のリスクを回避できたとしている。
イトウ博士ら研究チームの今後の目標は、髪の再生を促すための薬剤標的を特定することとしている。
なお、米国でも薄毛に悩む男性は多く、米国皮膚科学会(ADD)によると、アメリカ人男性の25%ほどは25歳頃からハゲ始めるといい、新たな薄毛治療薬の開発が注目されている。
『Nature Communications』に掲載された研究チームのデータ
(*)ミノキシジルは、頭皮に塗り込むと、血行を良くし、毛包に栄養を与え、男女ともに3分の2の程度の人に発毛効果が現れる。しかし、人によっては心拍数の上昇、足のむくみ、胃の痛みといった副作用がある。
フィナステリドは、テストステロンをハゲの原因となるホルモンであるジヒドロテストステロンに変換する酵素をブロックし、男性の8割に発毛効果があるという。しかし、60人に1人の割合で勃起不全になる恐れがあり、このリスクは服用期間が長引くほどに高まる、といわれている。
なおフィナステリドは男性にしか効果がない。
記事の引用元
『Nature Communications』
https://www.nature.com/articles/s41467-018-07142-9
タグ: 海外トピックス, 男性型脱毛症, 薄毛治療