美容師の着付と業務独占

Posted on | 1月 23, 2018 | No Comments

東京・八王子や横浜で成人式の当日起こった「はれのひ」事件。着付のできる美容師さんや着付レンタル業者の間で、被害にあった新成人を救済する動きが広がっています。今回問題を起こした「はれのひ」以外にも着物販売業、レンタル業に関しては被害相談が多く、国民生活センターには例年、400件ほどの相談が寄せられています。

着物販売・レンタルをはじめ、着物に関する製造、流通、販売を含め和装業界といいますが、そもそもこの和装業界、問題の多い業界です。業者間の取引では、歩引き取引・延べ払いなど不透明な商習慣が横行していますし、消費者への販売では、情報の不均衡をいいことに、安売りならぬ「高売り」が普通に行われています。

このような業界は、消費者から見放されても仕方ありません。和装市場は昭和50年頃には約1.8兆円あったものが、近年は2800億円と6分の1以下までに縮小しています。

経済産業省は平成27年に和装振興研究会を発足させ、さらに和装振興協議会に発展させ、和装業界の振興に取り組んでいます。
昨年11月にはこれまでの検討を踏まえ、和装業界の不合理な旧習を改め、和装の持続的発展をめざすための商慣行に関する指針を発表しています。
和装の振興を図るために、2018年を和装のユネスコ文化遺産登録のキックオフ年と定め、始動をはじめたた矢先の「はれのひ」事件です。和装業界にとって出鼻を挫かれた格好です。

和装振興協議会がまとめた報告書「和装の持続的発展のための商慣行のあり方について」（平成29年5月）には、前述の通り和装業界の多くの問題点が指摘されています。
その報告書を踏まえて開かれた11月の検討会で、和装関連業を代表する委員の発言を聞いた座長は「指針に関してはもちろん賛成であるけれども、現実的にはなかなかそれを実現していくのは難しいというようだ」とまとめています（議事録より）。つまり総論賛成、各論反対です。

経済差産業省が主催する和装振興研究会、和装振興協議会では、残念ながら美容師の着付は蚊帳の外です。しかし、着付・着物と美容師は江戸時代のむかしから深い関係があります。髪結さんは髪を結い、着付をしました。それは明治以降も続いている美容師の業務の一つです。

そもそも江戸時代初期、垂れ髪がタボ（上方ではツト）として上がったことで、空間のできた背面に帯を結んだことが現在に続く着物のもとです。髪結（日本髪）と着物は不即不離な関係にあり、和装はある意味、背面の美といえます。

余談はともかく、美容師の行う着付は消費者と密接した仕事で、しかも和装業界に見られるような悪徳に近い商習慣は消費者との間に存在しません。
消費者の安心、健全な商取引を進めるなら、和装業は美容師を中心にして展開することが必要です。和装業界の現状を見るにつけ、美容師による着付の意義は大きく、重要なのがわかります。業務独占も十分考えられそうです。

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