新規開業が難しい今、面貸し・シェア美容室がある
Posted on | 6月 13, 2012 | No Comments
美容業界がオーバーショップ状態であることは以前にも指摘した。このオーバーショップ状態は、四半世紀も前から言われてきたことであるが、この間、理容業界から男性客が流れてきたことなどもあって、美容マーケットが拡大を続け、これだけの店舗数を維持してこれた。
しかし、増え続けてきた美容室も縮小する兆しが見えはじめてきた。
経済の指標として最も信頼されている経済センサスによると、平成18年に17万6071店舗あった美容室が平成21年は17万6157店舗と、3年間で増加したのは86店舗にとどまった。現在、行われている平成24年調査では21年を下回るものと予測される。
美容室が一本調子の右肩上がりで増え続けてきたのには、美容師さんの強い独立志向がある。独立開業して、「一国一城の主になる」という夢を持って、多くの若者がこの業界に入ってきた。そして、その夢を実現してきたから、美容室の数は増え続けてきた。
若者が独立開業を目指す背景の一つには、美容業界の長時間労働や低賃金、社会保険への未加入などの問題がある。家族を養うような年齢になれば独立せざるを得ないのだ。逆に言えば、将来独立する夢があるから、いささか劣悪な労働環境に我慢してこれた、ともいえる。
ところが、ここ数年来、独立が難しい情況になっていきている。立地場所や規模などにもよるが開業するには2千万円程度は必要という。その資金を蓄えるのも難しいし、融資情況も厳しくなっている。たとえ新規に開業しても失敗するケースをよく耳にする。事実、近年新規開業者の廃業が目立つという。
そこで、いま注目されているのが面貸しというシステムだ。椅子・鏡面を借りて、そこで個人事業主として営業する。客は自分の指名客が基本になる。
これなら資金はかからない。小さな面積ではあるが、独立した営業が可能になる。もちろん、売上げは実力次第だ。
この面貸しを足場にして、自分の美容室を構えることも可能だ。
この面貸し、欧米ではすでに広く行われているシステムだそうだが、日本ではまだ未成熟な分野だ。
固定費による契約、還元・歩合制による契約、両方を併せた契約など、いろいろな契約方法がある。要は借り手と貸し手の費用分担と収益配分だが、契約内容については、事前に精査する必要がある。
また最近では、美容室をシェアするシステムも登場している。面貸しが月単位など長期間なのに対し、シェア美容室は時間単位で椅子・鏡面を貸す。貸し手は空いている椅子を有効活用できるし、借り手の美容師さんは費用も安く手軽に仕事ができる。費用は立地や店のグレードによって、300円から3000円以上と幅があるが、費用関係は明快だ。
面貸しにしろシェア美容室にしろ、独立開業が難しくなった美容業界で、一つの有力な手段になるだろう。
とはいえ、確実に減少に転じる美容業界にあっては、生き残るための戦略はこれから必須になる。少なくとも、今まで通りでは間違いなく淘汰される。
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