マンダム、皮膚の「感覚センサー」TRPチャネルの新知見を発表

Posted on | 10月 20, 2025 | No Comments

株式会社マンダム（大阪市）は、細胞に存在する感覚センサー「TRPチャネル」に関する新たな研究成果を発表した。

これらの成果は、2025年9月15日から18日にかけてフランス・カンヌで開催された「第35回国際化粧品技術者会連盟大会（IFSCC Congress 2025）」で公表されたものだ。

TRPチャネル（Transient Receptor Potential channel）は、温度や化学物質など多様な刺激を感知する「ポリモーダル（多様刺激）受容体」であり、皮膚をはじめとする多くの細胞に存在する。マンダムは2005年から約20年にわたりTRPチャネルの研究を継続しており、これまでに国内外の学会で数々の成果を発表してきた。

今回の研究では、TRPチャネルが皮膚内のさまざまな細胞で異なる発現パターンを示すこと、温度やpHがその活性に影響を与えること、またアルムK（硫酸アルミニウムカリウム）が特定のTRPチャネルを抑制し、鎮痛効果や制汗作用に寄与する可能性があることなどを明らかにした。さらに、冷感を感じるTRPM8チャネルがアルカリ性条件下で活性化し、メントールによる冷感が増強されることも確認した。

各細胞で異なるTRPチャネルの発現

研究グループは、表皮角化細胞、免疫細胞（単球・マクロファージ・樹状細胞）、および汗腺の構成細胞におけるTRPチャネルの発現を解析した。その結果、汗を分泌する細胞ではTRPV4が、汗を再吸収する細胞ではTRPV3が高く発現していることを突き止めた。これにより、TRPチャネルが発汗調節に深く関わる可能性が示唆された。

温度・pHとTRPチャネル活性の関係

温度（25〜39℃）およびpH（5〜9）の変化がTRPチャネルの活性にどのような影響を与えるかを調べたところ、TRPV1は高温下でpHの影響を受けにくく、TRPA1、TRPV3、TRPV4、TRPM8はアルカリ性環境で活性が高くなる傾向を示した。これは、肌の環境条件によってTRPチャネルの反応が異なることを意味する。

アルムKの制汗・鎮痛作用のメカニズムに示唆

同社は、アルムKがTRPV1やTRPA1の活性を抑制し、その作用が温度上昇とともに強まることを確認した。また、汗腺に多く存在するTRPV4の活性も抑制することがわかり、アルミニウム化合物が古くから制汗剤に利用されてきた理由の一端を説明する可能性があるという。

冷感の強まりとpHの関係

さらに、冷感を担うTRPM8チャネルがアルカリ性条件下で直接活性化され、メントールによる冷感が強まることを被験者実験で確認した。これは、製品設計において使用環境のpHが体感に影響することを示す重要な知見だ。

今後の展望

今回の研究により、皮膚におけるTRPチャネルの発現パターンと環境条件による応答の違いが明らかになった。化粧品の使用環境では温度やpHなど複数の要素が同時に肌に作用するため、こうした複合的条件下でのTRPチャネルの挙動を理解することは、快適性や機能性を高める製品開発に直結する。

マンダムは今後、これらの知見をヘアケア、ボディケア、スキンケア製品などへ応用し、皮膚の環境応答メカニズムの解明と新たな化粧品価値の創出に取り組んでいく方針だ。

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