「見えない開業」が示す、理美容業界の静かな変化|Review社が調査レポート
Posted on | 8月 1, 2025 | No Comments
株式会社Reviewは、2025年7月30日に「全国の理美容開業ランキング 2022年-2024年年間比較」を発表した。これは47都道府県における過去3年間の理美容室の開業件数をもとに、地域別・月別のトレンドを読み解いた調査レポートだ。

以下は、同レポートより。
2024年に全国で開業された理美容室は6,093件。2022年の8,608件から、わずか2年で約2,500件の減少となった。しかし、この数字の落ち込みは業界の後退ではない。むしろ、理美容業界の「開業」の概念が大きく変わりつつある実態を示している。
現在、理美容師の働き方は「自分の店を持つ」以外にも、フリーランスや業務委託といった多様なスタイルが浸透している。シェアサロンやマンツーマン型の施術、訪問美容など、“店を持たない開業”が日常となりつつある。
2024年の開業件数ランキングでは、東京都(808件)、大阪府(565件)、愛知県(424件)、神奈川県(330件)、福岡県(290件)がトップ5を占めた。都市部では、SNSを駆使したブランディングや、設備投資を抑えたサロン経営が支持されており、特に東京ではミニマムな開業スタイルが増加している。一方、大阪では地域密着型の堅実な出店が多く、住宅街での1人サロンが好まれている。
また、2024年4月に施行された「フリーランス新法」によって、業務委託で働く理美容師に対する法的保護が強化され、契約や報酬支払いの透明性が高まった。これにより、開業のハードルが下がり、“見えない開業者”の増加を後押ししている。
加えて、高齢化社会を背景に「福祉美容」への注目も高まっている。サロンを持たずに施設や自宅に訪問する働き方が地方を中心に広がりつつあり、従来の“立地型開業”から“ニーズ起点型”へのシフトが進んでいる。
数字上では開業件数は減っているが、理美容師の数そのものは増加傾向にある。その理由のひとつが、「開業届を出さずに働く」人の増加だ。実際には、フリーランスや業務委託という形で働き始めているが、それが統計に表れていないため、数字だけでは実態が見えにくい。
現在、美容師の約30%が店舗オーナーであり、同様に30%前後がフリーランスや業務委託という非雇用形態で働いているとされる。これは、開業=店舗を持つことという従来の認識が変わりつつある証拠でもある。
今、求められているのは「雇わずに共存できる」柔軟なサロン設計と、「数字に表れない働き方」を受け入れる業界全体の視点だ。見た目や設備投資ではなく、「どう働くか」「どこで誰にサービスを届けるか」が重視される時代へと移行している。
理美容業は単に外見を整える産業ではなく、人々の日常と暮らしの質を支えるインフラでもある。開業数の減少を業界の衰退と結論づけるのではなく、多様化する働き方に目を向けることが、これからの理美容業界に求められている姿勢だ。
全国理美容開業ランキングレポート ver4 〜2022年〜2024年年間比較〜
https://re-view.jp/wp-content/uploads/marketingreport_beauty4.pdf
タグ: Review, 調査レポート, 開業件数

























