「ツッパリ感」の認知メカニズムを解析
Posted on | 3月 18, 2024 | No Comments
洗顔後などに感じる皮膚の「ツッパリ感」の認知メカニズムが解析された。
日本ロレアルが2024年3月12日発表した。
ロレアルグループの研究開発部門、ロレアル リサーチ&イノベーションは、ヒト皮膚の生体力学的変化とその感覚知覚への影響について、所属するアン・ポッター研究員(化学物理学博士)とスタンフォード大学ラインホルト・H・ダウスカールト教授のチームが共同で行なった最新研究を発表した。
この研究では、洗顔後などに感じる皮膚の「ツッパリ感」について、その感覚が生起し認知されるメカニズムを解析し、角層の力学的変化が感覚受容器を活性化し、神経シグナルに変換する仕組みと、個人の主観的知覚を理解するための定量的な枠組みを明らかにした。
また、この研究内容について、3月21日に東京で開催されるロレアルグループの「タカミ」の製品発表会で、アン・ポッター研究員が来日し、概要を説明する。
皮膚は複数の層で構成されていますが、角質は皮膚の最も外側に存在する層で、皮膚細胞が分化(a)した角質細胞と脂質で形成されています。
外部からの異物の侵入を防ぎ、物理的な刺激や化学的ダメージから皮膚を保護し、体内からの水分の損失を制御する役割があります。健やかな皮膚のためにはバリア機能が強く、水分バランスが保たれ、正常なターンオーバーを示すといった、適切にケアされた角質が重要な要素になります。
洗顔後の皮膚のツッパリ感は、実際に皮膚水分量計で測定された水分量や経表皮水分損失による測定で測定された角質層のバリア機能よりも、表皮の感覚受容体(c)によって感知される乾燥の自己認識や、硬さなどの角質層の生体力学的特性(b)に関係していました。
このツッパリ感は、適切な保湿剤で皮膚をケアすることで緩和することができることがわかりました(1)。In vitro試験(d)、in silicoモデリング(e)、およびin vivo自己評価試験(f)を組み合わせた解析により、角層の生体力学的特性(b)の変化から生じる張力(硬さ)が感覚受容体を刺激し、それがツッパリ感として知覚されることが示されました(2)。
ロレアルR&Iではこれらの研究結果を、健やかで美しい皮膚のための製品開発に応用していきます。
注:
a:細胞が組織として特殊化し、形態や機能の特異性が確立していくこと
b:生物の構造の力学的な性質。この場合は柔らかさ、あるいは伸張性
c:感覚刺激を受けて神経を活性化する器官。この場合は物理的刺激(物理的な力、あるいは力による変形)の受容器
d:試験管内での(in vitro)試験という意味で、生物の細胞や組織を使用した試験のこと
e:シリコンチップ内での(in silico)という意味で、コンピューターを使用し作成したモデルを用いて実験や測定に関連するシミュレーション計算をおこなうこと
f: 生体での(in vivo)試験という意味で、この場合はボランティアのモニターによる官能評価試験のこと
参考資料:
1.Ross Bennett-Kennetta, et al., “Sensory neuron activation from topical treatments modulates the sensorial perception of human skin”, PNAS Nexus, 2023, 2, 1–12
2.Sebastian Hendrickx-Rodriguez, et al., “From decoding the perception of tightness to a clinical proof of soothing effects derived from natural ingredients in a moisturizer”, Int J Cosmet Sci. 2022;00:1–14.
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