講武所風 鶺鴒髷の太さは?
Posted on | 11月 18, 2023 | No Comments
幕末の江戸で流行ったのが、講武所風(図版参照)といういで立ちです。
幕府がつくった講武所に通う旗本、御家人の若い侍らが、鼠衣紋の短めの打裂(ぶっさき)羽織に揃いの袴、朱鞘の長刀、朴木(ほうのき)の高下駄を履いて江戸の大通りを闊歩したとされています。髪月代も独特で、指二本ほどの細い月代に、髷と刷毛を等分にして結った、いわゆる講武所髷が決まりでした。
この髷姿で闊歩すると、髷は上下にカクカクと動く。その動きが鶺鴒(せきれい)が歩くのに似ているので別名、鶺鴒髷とも称します。講武所風にした侍は若い娘から人気だったという言い伝えもあります。江戸市中の耳目を集めたようです。
鶺鴒髷の太さについては、細めに結った絵画史料(図版)がある一方、太く描かれた絵画史料もあります。カッコよさの面では細い髷が有利なようです。太い髷はいまの感覚ではダサイという表現になりそうです。
月代を細く剃ると髪は多く残ります。髪が多ければ髷の毛量も多い。髷は太くなるのが自然です。
細い髷にするには毛量を減らさなければなりません。いまの技術用語でテーパリングして少なくします。これができるのはプロの髪結床です。剃刀で毛束を削り毛量を減らし、また跳ねる毛を鬢付け油で抑えて処理する必要があります。
伊達者の講武所侍は髪結床に足しげく通ったのでしょうが、自前あるいは仲間内で結っていた講武所侍の髷は太かったかもしれません。
鶺鴒髷は太かったのか細かったのか? 両方が混在していたとみるのが妥当なようです。
図は、『幕末の江戸風俗』(岩波文庫)の著者・塚原渋柿園(1848-1917)が描いた絵です。講武所侍を実見しているだけに、実際のいで立ちに近いと思われます。この絵では髷は細く描かれています。
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