毛髪内部を可視化する独自イメージング技術確立　タカラベルモント

Posted on | 9月 3, 2023 | No Comments

タカラベルモントは、髪質や毛髪内に生じる変化を可視化して調べるため、毛髪を薄くスライスし、そこに様々な蛍光染色を組み合わせる独自のイメージング技術を確立した。

同社が2023年8月29日発表した。
この研究成果については、第88回SCCJ研究討論会（2022年7月22日）、第89回SCCJ研究討論会(2022年12月1日～2日)で口頭発表した。

要点は、
・独自の切片作成＆染色技術により、毛髪内部の様々な変化を視覚的に捉えることを可能にした
・まず毛髪の強度や柔軟性に関係するチオール基(-SH)の詳細な分布を可視化した
今後、髪質の違いやダメージによる変化について、毛髪内部を可視化することによる実態解明を目指す、という。

＜蛍光イメージング技術の開発について＞
日常生活や理美容サロンでの施術などにより生じる様々な毛髪の変化は、機器の技術の進歩により、そのままの状態でも毛髪内部の様子をある程度可視化することが可能になりました。しかし、毛髪を薄くスライスして切片にし、内部状態を直接観察すれば、より詳細な情報を得ることができます。

また、切片にすることで特定の色素により内部構造を染め分けて識別できるようにする「組織染色」が可能となり染色の組み合わせ次第で多彩でかつ詳細な情報を得られます。しかし、毛髪切片は厚さ0.01mm、直径0.08mm(毛髪の横方向の切片の場合)と、視認するだけでも難しく、組織染色をする場合はそれらをさらに洗浄や染色するといった工程が繰り返し必要です。

加えて 、毛髪は同一人物毛でも一本一本状態が異なり、大量の毛髪を調べなければなりません。このようなハードルの高さもあり、これまで毛髪を切片化して染色することはあまり行われておらず、実施されても比較的簡易な染色がほとんどでした。しかし、当社独自の染色プロセスを用いることで、複雑な工程を要する染色や処理の組み合わせが容易に実施できるようになりました。

さらに当社では、毛髪を縦方向にスライスする独自の切片作成技術を確立しており、毛髪を縦・横と異なる方向に切片を作成し、そこに組織染色を組み合わせることで、より多角的に毛髪内部の状態を調べることができる独自の蛍光イメージングが可能になりました。

＜研究例／健康毛におけるチオール基(-SH)の分布＞
毛髪の重要な構成要素として、ジスルフィド結合(S-S結合)があり、これがパーマ剤による還元や紫外線などによって切断されてチオール基(-SH)を生じた状態では、毛の形状が変形しやすく、毛髪強度も低下します。

一方で、健康毛でも-SHが存在することは知られており、毛髪の柔軟性を保つ上で重要な存在だとも考えられてきましたが、この-SHについて、具体的にどこで、どのように存在しているのかはわかっていませんでした。そこで、まず健康毛における-SHをDACMという蛍光色素で選択的に標識し、さらにCMCやコルテックスの状態を識別する染色法と組み合わせることで、健康毛における-SHの詳細な分布を可視化することに成功しました。また、この分布パターンは人により違いがあることもわかり、この分布パターンの違いが髪質にどのような影響を与えるのかを今後は調べていきます。

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