香り成分が皮膚のメルケル細胞を活性化させ、老化防止の可能性も
Posted on | 10月 20, 2022 | No Comments
資生堂は、香り成分よって触覚を担うメルケル細胞が活性化することを実験により証明した、と2022年10月20日発表した。
ドイツ・モナステリウム研究所との共同研究による。活性化させる香りは、サンダルウッド様の香りを持つ香り成分、ヒト皮膚培養系の実験で証明した。
また、メルケル細胞が加齢とともに減少することも発見した。
同社の先行研究で、メルケル細胞と接続して触覚を脳に伝える神経線維がハリやたるみに関連する真皮の構造維持にも関与していることを明らかにしており、このことからメルケル細胞は肌の老化に影響していると考えられ、今回の発見により、直接肌に触れることなく、香りを用いて、肌を美しく健やかな状態に導く新たなアプローチの可能性が示された、としている。
なお、この研究の成果の一部は「国際化粧品技術者会連盟カンクン中間大会2021(IFSCC Conference 2021)」(2021/10/18-28)の口頭発表部門で発表し、最優秀賞を受賞したという。
以下、資生堂の発表
《研究背景》
資生堂はこれまでにも神経と肌の関係性について研究に取り組んできました。2019年には、真皮深層を含む肌奥深くの神経線維を3次元で可視化する独自技術(特許出願済み)を確立し、肌に存在する神経線維が加齢と共に減少すること、そして感覚神経細胞から放出される成分が、肌の弾力に関わる線維芽細胞のコラーゲン産生を促すことを明らかにしています。
また、『幸せホルモン』などとしても知られるオキシトシンについては、一般的に知られる脳由来のものだけではなく、肌由来のオキシトシンが存在することを明らかにし、2021年には、肌由来オキシトシンが表皮の再生を促すことを発見しています。
今回、触覚を皮膚の最前線で感じ、脳に伝える重要な役割を果たしているといわれるメルケル細胞に着目し、いまだ未解明なヒト皮膚での様態や機能、そしてメルケル細胞を活性化する方法について研究を進めました。
《加齢によるメルケル細胞と感覚神経の減少》
触覚を感じるメルケル細胞のヒト頬における存在状態や分布について、年齢による違いがあるのかどうか調査を行いました。
まず、表皮において5%以下しか存在しないと言われている数少ないメルケル細胞を明瞭かつ広範囲で観察するために、表皮を皮膚から剥離する技術と共焦点顕微鏡による3次元スキャン技術を組み合わせ、皮膚組織内でのメルケル細胞の分布を詳細に捉えることに成功しました)。これにより、メルケル細胞も神経線維と同様に加齢により顕著に減少することがわかりました。
《メルケル細胞を活性化する香り成分の発見と肌への影響》
資生堂は最先端の皮膚・毛髪科学研究機関であるモナステリウム研究所と2017年から共同研究を進めており、この度、これまで皮膚で触覚を感じる細胞として考えられてきたメルケル細胞に、香り受容体が発現していることを発見しました。
さらに、メルケル細胞で発現していた香り受容体に結合することが知られているサンダルウッド様の香り成分を含む溶液にヒト皮膚組織を浸して刺激すると、メルケル細胞が反応することをリアルタイムで示すことに成功しました。
また同時に、サンダルウッド様の香り成分で刺激したメルケル細胞からは、NGF(Nerve growth factor 神経成長因子)が放出されることも発見しました。NGFはその受容体を持つ表皮細胞や線維芽細胞、神経線維等を通して皮膚を健康に保つことが知られており、触覚を担うメルケル細胞が香りを受容し、さらにその活性化により肌を若々しく保つ可能性が新たに示されました。
《今後の展望》
今回新たに、触覚を担うメルケル細胞と神経、肌との間には密接な関連があることがわかりました。メルケル細胞が発見されてから約150年、感染症の流行などにより人と人との触れ合いが減る昨今、触れること以外で触覚に関わる細胞や神経を活性化し美肌へアプローチすることは、新たなビューティーケアの可能性に光を当てます。
当社は今後も感覚や神経、 肌との関連についての研究を深め、2030年に向けた経営ビジョン「PERSONAL BEAUTY WELLNESS COMPANY」の実現を目指します。
タグ: メルケル細胞, 研究, 資生堂