『厚労省』(鈴木穣・著、新潮新書)
Posted on | 9月 17, 2022 | No Comments
厚労省といえば、理美容業界を所管する官庁である。その厚労省の現状と概要を伝える書籍が今年発行された。
書名は『厚労省』。サブタイトルは「劣化する巨大官庁」。著者は、厚労省の番記者経験のある鈴木穣東京新聞論説委員。番記者を勤めただけあって省内の内情に詳しい。
一般予算の三分の一を使う巨大官庁だが、近ごろ不祥事や不正事件が頻発している。その原因は不可解だが、隠ぺい策はお粗末でばれてしまう、対応策もお粗末で混乱を招く、なぜ起こったかを検証する作業もお粗末で再発する。お粗末尽くしで、ただ笑うほかない、けど悲しい。
本書は、厚労省の役人を批判しているわけではなく、むしろ内情を知っているだけに同情的な記述も多い。とりわけ官邸主導になってからの役人のモチベーションが低下した心情は察せられる。労働面でもブラック企業ならぬブラック官庁という。
もっともお粗末になったのは厚労省だけではない。他の官庁も似たり寄ったりだが、国民生活に密着している官庁だけに国民の批判は大きい。サブタイトルは「劣化する巨大官庁」とあるが、劣化する日本、と読み替えられる。
本書は、いまの厚労省に焦点をあて記述されているが、厚労省の歴史や重要政策にも詳細な解説が及んでおり、「厚労省学」入門書として適している、といえる。
ところで、理美容業や生衛業はどのように記述されているのか気になって手にした本書だが、厚労省の業務を紹介した項で、「意外な役割では理容・美容店、公衆浴場、旅館などの営業規制や振興策……、なども担う。」とあるのみだった。
社会保障や医療、健康に比べれば、予算額をみるまでもなく、理美容をはじめとする生衛業は些末な分野にすぎない。著者も、おそらく国民も厚労省が生衛業を所管しているのは意外なことなのだろう。
『厚労省』劣化する巨大官庁
著者:鈴木穣
版元:新潮社、新書版(新潮新書)、240ページ
発行日:2022年2月20日
定価:820円(税別)
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