スペイン風邪に学ぶ、アフターコロナの理美容
Posted on | 5月 17, 2020 | No Comments
今回の新型コロナウイルスのように世界的な感染が発生すると、その後、社会・経済が大きく変わる可能性があり、アフターコロナが早くも話題になっている。変わるのは社会・経済だけではない。風習や風俗も変わる可能性があるのは、1世紀前のスペイン風邪が教えるところである。
1918年、米国で発生し世界的に感染拡大したスペイン風邪。第一次世界大戦とほぼ同時に発生したこともあり、その後の風習・風俗を変えるきっかけとなった。
スペイン風邪後、それまでロングだった女性の髪がショート化し、男性が自宅でヒゲを剃る習慣が定着した。スペイン風邪によって、人々の衛生観念が大きく変わったことが、その背景にあるといわれている。
女性の髪のショート化については、当時アタマジラミが流行ったためという説もある。また、戦地に動員された男子に代わって生産工場などに動員され、ロングヘアだと何かと不自由だったためという説もある。これらが複合して欧米女性の髪がショート化したのだろうが、スペイン風邪がトリガーの一つになった、といえる。
また、ショート化の背景には、マルセルアイロンが開発され、ショートへアでもウエーブを形作れるようになっていたこともある。余談だが、欧米女性のショートヘア化は数年後に日本に伝わり、モガとして知られるヘアスタイルがそれである。
男性の自宅でのヒゲ剃りについては、その前提に安全剃刀の開発がある。安全剃刀は19世紀末に開発、製品化されていたが、自宅で髭を剃る習慣はなく鳴かず飛ばずだった。一気に普及したのはスペイン風邪後である。衛生観念の浸透と、毒ガス兵器に対応するためのガスマスクを装着する際、ヒゲがあると不都合だったということもある。
安全剃刀のメーカーのジレット社が軍に大量に製品を納品し、戦場でヒゲを剃った兵隊は帰還後もヒゲを剃るようになり、ヒゲ剃りの習慣が根付いたといわれる。
それまでは理容店で行われていたヒゲ剃りが、家庭で行われるようになり、理容師の仕事が変わった。ヒゲ剃りの比重が下がり、カット中心になった。ヒゲ剃りがメインメニューだったころは、2、3日に一度は来店していた客の足は遠のき、理容店は打撃を受けたはずである。
そしてアフターコロナ。
コロナ発生前の状況にはもどらないだろう。しかしかといって、急激にしかもダイナミックに変わることはおそらくないだろう。経済と違い、生活に密着した風習・風俗が変わるのには時間がかかる。
何年か経った後、振り返ってみてはじめて、コロナが一つの転機になって、理容美容など美容系職種の内容が変化したのを知ることになる。スペイン風邪のときがそうであったように。
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