江戸時代にあった、劇薬入りの育毛剤
Posted on | 11月 14, 2018 | No Comments
紀元前5世紀ごろには、「ヒポクラテス考案の育毛剤」がありましたが、日本にも江戸時代に強力な育毛剤がありました。
なにしろ不注意で指につけでもしたら、そこから毛が生えてしまう!という代物です。育毛剤を通りこえて、危険物です。そんな注意書きのついた育毛剤です。
材料は、びゃくし、しんしょう、せんきゅう、まんけいし、れいりょうこう、ぶしの6つです。これを刻んで絹の袋に入れ、ごまの油に20日間ひたして、有効成分を抽出した育毛剤です。
原料はいづれも漢方薬です。
びゃくし(白止) セリ科のヨロイグサの根を乾燥させた生薬。鎮静効果があります。
しんしょう(秦椒) ミカン科のフユサンショウの実。
せんきゅう(川芎(クサカンムリに弓)) セリ科。刺激作用があります。
まんけいし(蔓剕) クマツヅラ科の子実。古来より髪を長く、黒くする効果があるとされています。
れいりょうこう(零陵香) シソ科のカメボウキ。
ぶし(附子) キンポウゲ科のトリカブト。猛毒のアルカロイドが含まれています。塊根を乾燥させたものを用います。
しんしょう、れいりょうこうは含まれる精油成分から匂いつけに配合されたものと思われます。これ以外の成分に育毛剤としての効能が期待されますが、なかでもぶしは末梢神経を刺激し血行や分泌を促進するなどの効能があるとされていて、効果は高そうです。
ぶしは使用方法によっては毒になり、以前、トリカブト保険金殺人事件がありましたが、人を死亡させるほどの猛毒です。こんな劇薬が配合されているので、冒頭のような大袈裟な取扱い注意になったのかもしれません。
ちなみに、ぶしは薬用としての名称、毒として用いるときはぶすといいます。ぶすを口にした女性が顔をゆがめたことから、ブスという形容詞が誕生したという説があります(諸説あります)。
この育毛剤は、抽出油をへらにすくい取ってハゲの部分に塗って使います。
ハトの糞、アヘン、セイヨウワサビ、スパイスから作ったヒポクラテスの育毛剤と、日本の育毛剤、その効果のほどは?
*写真は2018年10月撮影したトリカブトの花。日本で自生しています。
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参考文献・『都風俗化粧伝』(東洋文庫版)
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