結髪師・林照乃さんが銀杏返しを実演

Posted on | 9月 3, 2017 | No Comments

神奈川県箱根町のポーラ美術館は2017年9月2日、同美術館講堂で、日本髪を結うデモンストレーションイベントを行った。開催中の「日本の化粧道具と洋画でひもとく　よそおいの近代」展に関連して、同美術館の入館者を対象に開催したもので、日本でも数少ない結髪師である林照乃さんが銀杏返しの日本髪と、二〇三高地髷の束髪を実演して見せた。

解説は、村田孝子ポーラ文化研究所シニア研究員が担当し、同研究員がイベントの趣旨などを説明したあと、林さんが銀杏返しで登場したモデルさんの髪を解いて、二〇三高地髷に結う作業を開始。銀杏返しは江戸後期・幕末のころ若い女性から年増の女性まで結った、一般的で日常的な髷で、村田研究員は「働く女性がしていた」と説明。京阪の「新蝶々」といわれる髷がこの髷になる。

林さんは手際よく髪を解き、改めて二〇三高地髷を結う。
村田研究員は、日本髪が不衛生、不経済、不便などとし排斥し、二〇三高地髷など束髪をすすめた当時の束髪運動を簡単に説明、「日本髪を排斥した束髪も結局は華美なものになっていった」と女性の美への執着を語った。また二〇三高地髷の誕生した背景や、実際の二〇三高地は二〇三高地髷ほど急峻ではないことなどを笑いを交えながら語った。

この二〇三高地髷、日露戦争の戦勝記念的な意味合いもあるが、なかなか人気の髷で大正期まで流行ったという。近年でも浅草や銀座のやや年増の綺麗どころでしている女性もたまに見かけることがある、その筋の女性の定番束髪といえる。

今回のイベントは、銀杏返しの日本髪を解いて、二〇三高地髷を結うことで終える予定だったが、林さんが手際よく短時間で二〇三高地髷が結い終えたことから、二〇三高地髷を解いて銀杏返しを結う実演をして見せ、予定外の実演に来場者を喜ばせた。

村田研究員の話は、時代劇での時代考証の話や、実演イベントの裏話などにも及び、楽しい実演イベントとなった。「和」の文化が評価される昨今、満席に近い来場者が詰めかけ、林さんの髪さばき、櫛さばきに見ほれるとともに、解説の村田研究員の話に熱心に耳を傾けた。

日本髪を結うデモンストレーションイベント。下左は、銀杏返しを結う林照乃さん。下右は、二〇三高地髷を結う林さんと解説する村田孝子ポーラ文化研究所シニア研究員（会場は、ポーラ美術館）

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