新規開業の美容室が増えるワケ
Posted on | 4月 9, 2016 | No Comments
人口減少に転じた日本で、美容室だけは増え続けている、と前回書いた。
人口が減ることは需要減になり、美容室が増えることは供給増になる。
経済の常識でいえば、需要が減れば、供給もそれに合わせて減るものとされるが、美容業界はこの常識が通じない。
平成21年当時、理容美容合わせてだが、2兆5000億円近くあった理美容市場は現在では2兆3000億円程度に縮小している(統計によって違いはある)。この間も美容室は増えている。当然、1サロン当たりの売上は減り、技術者一人当たりの売上も減る。
他産業なら経費の節減や合理化で、売上減少をカバーするか、それができないなら撤退するのだが、美容業界はというと、人件費を抑制してしのいでいるのが現状だ。事実、給与面は他産業に大きく見劣りするし、社会保険に未加入な事業所も多い。
スタッフも若いうちは技術習得という目的もあり、なんとか頑張っているが、結婚して家族を養えるほどの収入は望めない。その時点で転職を決める技術者も多く、残念ながら、美容業界は転廃業者の多い業種とされている。
転廃業しない人は、雇われていても賃金アップが期待できないので、独立をめざすことになる。独立するには余裕のある資金が必要だが、美容業界には資金融資までを含めた独立開業パックが用意されている。だから、新規開業数がここ数年、1万店ベースで推移している。
独立開業パックというのは、出店場所の選定から店舗設計、開店当初の集客ノウハウ、開店後の経営管理、さらにはそれに必要な資金融資の斡旋までを含んだトータルプロデュースプランで、主に大手デーラーが提供しているサービスだ。
このサービスを利用して独立開業する人は少なくない。これで成功すればいいが、成功する人ばかりとは限らない。美容業界を取り巻く環境は前述の通り、縮小傾向にあるので、そんな中で新規開業サロンを軌道に乗せるのは容易なことではない。
実際、新規開業店は毎年1万店ほどを数えるが、廃業店も8千店を数える。廃業店の中には高齢などによる廃業も含まれるが、新規開業したはいいけど結局、失敗して夜逃げ同然で撤退するケースもある。そして残るのは膨大な借金だけである。
開業者が経営に失敗しても、独立開業パックのサービスを提供した方には傷みはない。開業にともない扱い商品や機器備品がはけるので、売上アップいつながる。金融機関を通しているので、代金の取りはぐれもない。こんな美味しい商売はない。
右肩上がりで美容室が増えるのは、こんなカラクリがあるのだ。
【小山秀男氏のホームページ】
http://www.koyama-lab.com/
タグ: 小山秀男の日々雑感