高齢者のターンオーバーが遅いワケ
Posted on | 9月 19, 2023 | No Comments
高齢者は皮膚のターンオーバーのスピードが低下することで、シワが目立ちやすくなるが、低下する理由について、角層細胞の隣接細胞との重複(オーバーラップ)が大きいことが関与していることが明らかになった。
ナリス化粧品がトーマスラボ社(福岡県飯塚市)と共同開発したAI解析システムで明らかにし、2023年9月4日から開催されている化粧品の国際学会、IFSCC Congress 2023 Barcelonaで発表した、と同社が伝えた。
以下、同社のリリースより。
これまでの角層研究における細胞形状の自動解析では、重複した細胞の輪郭を正確に見分けることが困難であったため、AI解析技術を確立し角層細胞の形状について、未知の実態把握を行うべく研究を開始。
2年以上をかけて、2万個以上の角層細胞形状をAIに学習させることで、重複した角層細胞の形状を大量かつ正確に把握するシステムを構築した。
そのAIを使用して、20代~60代(n=79)の半顔の角層を、オリジナルの角層テープで採取して154区画に分けて解析を行い、平均値を出すと、角層細胞の面積については、顔の中心部が小さく外側の方が大きい傾向があった。
円形度については額部分が正円に近く、顔の下半分でひしゃげている傾向があった。角層細胞の重複率(細胞面積に対する覆い被さっている細胞の面積)では、額からあごにかけて顔の中心部分で高く、頬からえらの部位で低いことがわかった。
さらに加齢変化に着目してみると、高齢者の角層細胞は重複率が高く若齢者は低いこと、またそれぞれの形状の要素を総合した場合に、高齢者と若齢者による差が大きいのは目もとや頬の下部など、たるみやシワが起こり易い部位であったため、真皮の状態の関与も示唆された。
これらの発見を基に、角層細胞の重複にフォーカスして研究を進めた。
角層細胞が重複した部分は、細胞同士がDSG1などのたんぱく質で結合しており、これが分解酵素によって分解されることでターンオーバーが生じることがわかっているため、角層細胞の重複率と剥離性に因果関係があると考え研究を行った結果、重複率が低いと角層剥離がスムーズであることに比べ、重複率が高いとDSG1の分解が阻害され、角層剥離が起こりづらくなることがわかった。
この結果から、高齢者の角層は重複率が高いため、ターンオーバーしづらいことが判明した。
発表タイトル: Differences in stratum corneum organization with detailed locations and agerevealed by artificial intelligence-aided half-face mapping of cell-to-cell position and cell shape
和文: AIを用いた角層細胞の相対位置と形状の半顔マッピングで明らかになった部位や年齢による角層細胞の差異
タグ: AI解析, ターンオーバー, ナリス化粧品